フィリップ組キリシュ14
レナードと俺は両極端な剣士だった。
レナードは教科書に忠実な基本のできた剣士だった。
幼い頃から天才と呼ばれて町道場でしごかれていた。
生まれが町人の出でなければ、騎士団にでも入れる腕だった。
しかし、彼の生まれでは冒険者になるしかなかった。
冒険者になってレナードは頭角を表した。
とにかく、剣術を極めた戦士だったのだ。
それに比べ、俺は我流。
剣技など習ったことはない。
ただ、それが俺には合っていたみたいだ。
型にはめられることなく、俺は剣を習得した。
もちろん、俺も生まれは良くない。
だから、俺も冒険者を目指したのだ。
俺の剣は自由な剣。
理屈にとらわれず、その場の状況に合わせて剣を振る。
だから、俺の剣には型なんてない。
もちろん、人に教えられるようなものではないんだ。
その俺たちがタッグを組むことになった。
俺たちは向かうところ敵なしだった。
俺が若い者に教えられるのは体幹を鍛えること。
体幹さえしっかりしていれば、まず大丈夫だ。
どんな態勢からも剣が振れる。
それが生き残る道だ。
冒険にはアクシデントがつきものだ。
それを克服するには、身体を鍛えるしかない。
だから、俺は新人冒険者に身体を鍛えることを教えた。
「まあ、元S級の剣士に指南いただけるとは光栄だね。
わたしも相当使えるようになりましたよ。
見てください」
そう言ってカシウスは細剣を抜いて飛び込んでくる。
両手に細剣を持つ二刀流スタイル。
元の俺と同じだ。
だが、剣は多ければいいというものでない。
手数は増やせるが、攻撃が雑で軽くなるんだ。
それがわかってやってるのか?
俺はその剣筋を読む。
速い、でも驚くほどではない。
普通に避けられる程度だ。
俺は、その剣を避ける。
態勢をくずすカシウス。
普通ならこれで死んでたな。
これでA級なのか。
最近の冒険者不足は大きな問題となっている。
レベルが低下しているというが、ここまで来ていたか。
俺らの頃ならB級の下だろう。
俺は隙だらけの脇腹を手で突く。
とにかく、無駄な戦いはやりたくない。
力の差をわかって引いてくれればいい。
「わたしの剣を避けるとはな。
逃げることだけはS級だな」
わたしの思惑に対し本人は何もわかっていない様子だった。
やれやれ、俺は溜息をつきながら、カシウスの正面に立つのだった。