フィリップ組キリシュ13
やばいな。炎の魔法は。
炎の魔法のやばいところはぶつかったら燃えるってだけではない。
ダメージを与えるのは爆発するときで、炎の怖さは攻撃力ではない。
空気を燃やすことだ。
ファイアーボールに包まれると、まわりの空気がなくなる。
そして、炎を吸い込んでしまうのだ。
そうなれば、肺が焼けておしまい。
ベルナは拳士を引き寄せ、一緒に炎を受ける。
そういえば、ベルナってさっきも炎に包まれていなかったか。
ベルナは炎からすぐに脱出する。
なんか、燃えにくいみたいだ。
それに比べて拳士は炎に包まれ続ける。
あれは、炎を吸い込んだな。
たぶん、生きてはいないだろう。
ベルナは魔術師の方に近づいていく。
ファイアーボールを何度もぶつけるがベルナには効かない。
「そう、効かないんです。
人間の身体はね。ケガが治るときに強化されるんですよ。
わたしはね。もう何度も焼かれてます。
苦しいんですよ。焼かれるのは。
でもね。だんだん耐性がつくんです。
もう、その程度の炎ではわたしの肌にやけどひとつつくれないですよ」
ベルナはもう魔術師のところに迫っている。
敵にしたら嫌なやつだ。
こいつは素人だけど、信じられないくらい打たれ強いんだ。
たぶん、あの魔術師ではどうにもならないだろう。
案の定、魔術師はベルナにつかまる。
たぶん、これで終わりだろう。
あの戦い方、気分は悪いが、俺は目の前のやつカシウスに集中できる。
ありがたいことだ。
魔術師の悲鳴が聞こえてくる。
あの化け物は剣も拳もない。
ただ、怪力で折るとか、ちぎる、爪で切り裂く、噛みつく。
そんなことしかできないのだ。
見ないでおこう。
俺は心の中で手を合わせる。
「さて、あとはおまえだけだな」
そう言ってカシウスに向き合う。
「ああ、なんちゃってS級のくせにわたしに勝てると思ってんですか」
「ああ、流儀は違うが俺はレナードに負けたことはない」
「双頭の虎はレナードさんのワンマンチームでしょ」
「そう思うのなら、確かめるといい」
俺は剣を構える。
その動きをカシウスはじっと見つめるのだった。




