フィリップ組キリシュ10
長い剣だ。
それを力任せに振り下ろす。
なかなかの剣技だな。
俺はその剣を避ける。
受け止めたら腕ごともっていかれそうだ。
できるだけぎりぎりで避けて、相手の様子を見る。
そのあとのリカバリーもちゃんとしてる。
攻撃のあとの隙を最小限にとどめている。
なかなかやるな。
しかし、一人でかかってくるとは、相手を舐めている。
俺の身のこなしをみれば、俺の力量もわかりそうなものなんだが。
全員でかかられたら、今の俺では少しきつい。
歳もあるが、実戦から離れているのもある。
普段抗争には参加していたが、相手は素人ばかりだ。
その上、こいつよりもカシウスというのがいちばん厄介そうだ。
次の攻撃もぎりぎりで躱す。
「おいおい、手も足もでないってか」
「ああ、すごい剣戟だ。
俺には受けることができない。
逃げるのがやっとだ」
剣筋は見えている、しかし、こっちの手を明かす必要はない。
舐めてくれたらそれに越したことはない。
「モラリス、遊ぶな。
ポンコツだが、元S級だ。
レナードさんの寄生虫といっても、修羅場はくぐっている。」
カシウスが戦士をたしなめる。
よくお分かりで。
しかし、この程度の戦士に俺の実力はわからないだろう。
この戦士、モラリスと言うのか。
「わかった。本気で行くぜ、おっさん」
「まあ、お手柔らかにな」
俺も剣を抜く。
しかし、俺の持つのは短い仕込み杖だ。
マネージャーがいかつい武器を持つわけにはいかない。
あくまで、護身用みたいな武器だ。
それに冒険者のころは双剣使いだった。
ハンデ戦だな。
しかし、十分だ。
さっきより少し鋭い剣戟が来る。
その剣を少し仕込み杖で弾く。
まともに受けたらこっちの剣は折れてしまう。
だから、方向を変えるだけだ。
モラリスは態勢を崩す。
これが大事だ。
剣と剣の戦いは体の崩しあいだ。
そのまま、軽く押すだけでモラリスは派手にコケる。
そのみぞおちに俺はかかとをめり込ませるもだった。