フィリップ組キリシュ06
劇場の出口付近が騒がしい。
どうしたんだ。
また、ファンが入ってこようとしたのか?
最近、そういうのが増えていた。
ジュエルボックスを出待ちしたり、なんとかして中に入ろうとするのだ。
その場合、丁重にお話してお帰りいただくようにはしている。
それも、俺がでるほどではない。
2人のセキュリティガードだけで十分だ。
「キリシュさん、お願いします。
ファンとかそういうのじゃありません」
チンピラ、いや、今は社員だったな、の一人がこっちに助けを求めてくる。
やれやれ、ファンの中にも腕の立つやつがいたか。
「わたしも行きましょう。
何発か殴らせれば帰るかもしれません」
グッズの売上を計算していたベルナも立ち上がる。
でも、このおっさん、いつも仕事してるけど、いつ休んでるんだ。
本当に謎の多いやつだ。
俺も裏口に向かう。
その目に閃光。
もしかして、ドアを吹っ飛ばされたか。
過激なやつもいるものだ。
「たぶん、ドアを壊されましたね。
これは、反撃してもいいのでしょうか?
戦ってもいいのでしょうか」
嬉しそうに小さなおっさんは笑う。
ほんとうに不気味なやつだ。
「ああ、やつらが実力行使するのなら、正当防衛だ」
俺も剣を佩いている。
この剣と魔法の世界では、あたりまえのことだ。
普通は使うことがないが、いざというときもある。
そういうときはアイドルを守るのが優先だ。
「フフフ、戦っていいんですよね。
ジュエルボックス様に危害を加えるような輩は。
殺してもいいんですよね」
ベルナは嬉しそうに言う。
身のこなしはあまりいいとはいえない。
あまり闘気みたなのも感じない。
そういえば、さっきから俺と同じ速度で走っている。
息も切らさずにだ。
俺たちは、裏口に到着する。
そこには倒れた2人のボディガード、壊されたドア。
それを見下ろすように4人の黒ずくめが月明りを背に立っていた。