フィリップ組キリシュ03
まあ、ライブの手伝いは命の代価だ。
そう開き直って、それに力を尽くした。
ただ、このジュエルボックスという少女たち、まさに天使だった。
ライブの収益を山分けにしてくれただけでなく、組長の顔の傷も直してくれた。
そして、今後も手伝ってほしいということになった。
俺たちは、その申し出を喜んで受けることにしたのだ。
俺は用心棒兼マネージャーとしてジュエルボックスにつくこととなった。
それは俺にとってすごくいいことだった。
みんなすごくいい子だったし、すごく真剣だった。
最初、俺は女子供のお遊びと思っていたが、そんなことはない。
あらゆることを真剣に考えて、ぶつかってステージを作っていく。
そこに妥協なんて言葉はない。
その場その場でベストを尽くすのだ。
俺の命は親友のレナードにもらったもの。
それなのに俺は腐ったように過ごしていた。
あの龍の目を見た俺は、もう何もすることができなかった。
剣を握るのさえ怖くなった。
俺は酒に逃げた。
気が付いたら昼間っから酒場で管をまく最低の男となっていた。
それを救い出してくれたのが組長だ。
組長は俺に仕事を与えてくれた。
組長も元冒険者だ。
しかし、足を悪くして引退をした。
それで、イベント関係を仕切る仕事を始めたのだが。
そういうことは荒事なしにはできない。
特に大きな組が、その力を背景に弱いものいじめをするのが、組長は耐えられなかったみたいだ。
もちろんわずかながらの金はもらうが、守るべきものはきちんと守った。
その信用がフリップ組をすこしづつ大きくしていった。
それと組長は夢破れた冒険者たちにセカンドライフを与えたかったのだ。
冒険者の仕事は、若いうちしかできない。
それに成功をつかむのは一握りだけだ。
引退した冒険者は潰しがきかない。
剣闘士になって殺しあうとか。
用心棒になるか。
そんなものしかない。
それを組長はすくっていたのだ。
俺もその組長にすくわれたのだ。
だから、恩義を感じ組長のために働いた。
大きな組が攻めてきたときも、俺と組員で退けた。
そう、大きな組でも元S級冒険者なんてほとんどいない。
俺の力はギャング相手には過剰すぎた。
いつしか、俺が出ていくだけで、抗争が終わるようになったのだ。
しかし、俺はもう以前の俺ではなかった。
ただ目的もなく生きているだけだった。
そんな俺が彼女たちに出会ってから変わった。
この子たちのためにできることをやりたいと思ったのだ。
俺はこの子たちのために飛び回った。
そして、彼女たちにもマネージャーとして頼りにされるようになったのだった。