ベルナ劇場支配人03
「どういうことですか?」
「契約書に書いてあるとおりにゃん。
お前は妾の奴隷になったにゃん。
喜ぶにゃん」
「どうして?」
「奴隷契約っていうのは、上のものが下のものとする契約ニャン。
もし、下のものが上のものを奴隷にしようとすると、反転するニャン」
「そんなこと」
「もし、奴隷契約を破って奴隷が主人に逆らうとどうなるにゃん?」
「それは悪魔が現れて、奴隷に罰を…あっ」
「そう、妾は原初の悪魔ケットシーにゃん。悪魔で一番偉いにゃん。
その妾を悪魔たちが抑えることができるにゃん?」
「…できないです」
「そう、下級悪魔たちは妾のために契約書を書き換えてくれたにゃん。
かわいいやつらニャン」
「それではわたしは」
「そう、これからは妾の言うことをなんでも聞くニャン。
うれしいにゃん?
そのかわりいいこともあるにゃん。
お前は死なないし、ケガしてもすぐに治るにゃん。
つまり、愚かな人間が求める不老不死にゃん」
「わたしが不老不死」
「でも、残念なこともあるにゃん。
人間の身体は自分を守るために痛みを感じるにゃん。
たとえば斬られたりしたら痛いにゃん。
斬られても痛くなかったら、ケガしたことわかんないし、治療もしないにゃん。
それで人間は痛みを感じるにゃん」
「それで、痛みを感じないんですか」
「いや、感じるにゃん。
でも、細切れにされても死なないにゃん」
「言ってることがわかんないんですが」
いきなり猫耳はわたしを殴る。
わたしは吹っ飛んで壁にぶつかる。
たぶん、骨が折れてる。
痛い。口から血が出る。
なんか内臓が破裂しているのか。
「こうされても死なないにゃん。
でも、治るまでは痛いにゃん。
わかんないなら、もう一度やるにゃん」
「わかりました。ごぼっ」
「それと、我が眷属になったんだから、寝なくても食べなくても働けるニャン。
妾のために24時間働くニャン」
「そんな」
「それと、そこらへんにある契約書、全部書き換えといたニャン。
みんな解放ニャン」
そのとたん、机の引き出しが開いて中の契約書が勝手に部屋の中に舞い散るのだった。