白銀美桜08
とりあえず、劇場を見に行くことになった。
正面に立つと、すごく立派な劇場。
アイドルのライブをやるところというより、クラシックやオペラをやるとこみたいな。
マイクシステムとかいうのが、向こうほどじゃないから、基本的には会場全体を使って音を響かせる。
楽器とかはいいが、声は相当の音量が必要。
オペラ歌手とかああいう歌い方が必要になる。
「ちょっと、照明と音響をみせて」
詩織が何か考えているみたいだ。
もしかして、なんとかなるのかな。
野外もあれ以上の人数になると無理だし。
そのうちクリアしないといけない問題だ。
劇場はまあまあかな。
あと、楽屋とか物品販売のためエントランスとかも見せてもらう。
まあ、及第点ってところ。
「なかなかいいわね」
「そうですよ。
ここまでの劇場は王立劇場くらいですよ。
しかし、演劇や歌ならここが限界です。
これ以上の大きさでは、広すぎると思います。
それとこの劇場はライティングがすばらしいのです。
優秀なライティング魔法の職人がいます。
よろしければ、契約をしてしまいましょう。
もし、今契約をしていただけたら、来週から使ってもらえます」
「ええ、でも、少しみんなで相談する時間をください。
明日、もう一度うかがいます」
「わかりました。
良い返事をお待ちしています」
紳士的なおじさんだ。
わたしたちは、礼をして劇場を出る。
「ほぼ決定ってとこかな。
あと期間とか、値段とか、フィリップスさんに見せて考えます」
その時、わたしたちの前に一人の男の人。
「あの、是非お話したいことが」
真剣な顔でわたしたちの前をふさぐ。
「あなたは…」
「ベルナ劇場でオーケストラのコンサートをしているものです。
契約はやめてもらえないですか」
「どういうことですか?」
「あの支配人、ベルナは悪魔です。詐欺師です」
「なにをしているんだ」
ベルナさんがこっちに走ってくる。
男の人はそれを見て、逃げ出すのだった。