白銀美桜07
それにしてもリムちゃんってすごい。
身体も柔らかいし、身体能力がいい。
体幹が強いっていうか、どんな態勢でもふらつかない。
ダンスの才能もあるみたいで、なんか佐那の教え魔に火がついたみたい。
当然、わたしへのレッスンも厳しくなる。
「この子、次のライブに出てもらうかも。
詩織、衣装は間に合う?」
佐那の呼びかけに詩織は親指を立てる。
「リム、すごいね」
休憩中話をする。
「とうぜんにゃん。
妾は世界の王のひとりにゃん。
原初の悪魔ケットシーにゃん」
リムは胸を張る。
かわいいんだけど、この中二病がなあ。
ダンスのあとはボイストレーニング。
こっちは普通の上って感じ。
でも、声量はすごい。
音程もずれてないし、なんとかなりそう。
あと、歌詞がちゃんと覚えられるかだ。
しばらくソロはなしって感じかな。
詩織にそう言っておこう。
とにかく、3日間は休みで練習に没頭する予定。
ゆっくり教えればいい。
そこにお客さんが来る。
きちっとしたスーツにシルクハットの小太りのおじさん。
ホテルの支配人とかそういう貫禄がある。
「ここの代表者の方はおられるか」
「はい、わたしです」
美羽が対応する。
「わたしはベルナ劇場のベルナです。
昨日の公演、素晴らしかったです」
「ありがとうございます」
「それで、我が劇場で公演をしていただけないかと思いまして。
我が劇場は王都でも中くらいの劇場です。
この辺の劇場では新しいほうじゃないでしょうか。
収容人数は500人で音響設備もそろっています。
いちど、見学していただいて、専属契約を結んでいただけたらと思います。
あなたがたの斬新なコンテンツはきっとブームを巻き起こすでしょう。
一度ご検討ください」
そう言って、ベルナさんは美羽に頭を下げるのだった。