龍王リヴァイア02
我は王都での推しとの運命的な出会いについて語った。
もちろん、美桜たんの歌の素晴らしさも。
いや、これは言葉にできるものではない。
それにこんな場で短い時間では語りつくせない。
「佐那ちゃんのダンスも素晴らしいのよ。
いままで、至高の存在である鳥のダンスはいろいろ見てきたけど、どれも稚拙なものね。
あのダンスの前ではわたしの羽根さえも色あせてしまう」
「一夏たんがやさしいんじゃ。
こんな老人にもちゃんと手を持って、次も来てくださいって。
ステージのときも二度も目があったんじゃ。
ほんとなんじゃ」
「あの曲の構成、旋律。
すばらしい。もう神が作ったとしかいいようのない曲なんだ。
リムも絶対に気に入ると思うよ。
あとで聞かせてあげるね。
詩織にミュージックボールをもらったんだ。
もう、あれからずっと聞いてるんだ」
わしが美桜たんの歌のことを話し出すと、鳥やじじいやスライムが横からいろいろ邪魔をしてくる。
「だから、妾を誘わずにそんな楽しいことをしてたにゃん」
「いや、あれは偶然だな」
そうあそこに我らが集まったのは偶然。
「じゃあ、次は妾もつれていくにゃん」
「え?」
みんな静止する。
そらあ。だめだ。
こいつを連れて行ったらトラブルしか起こさない。
それに、ライブは神聖な場所だ。
我の一番大事な時間だ。
そんなところにこの猫ニャンを連れていけるわけがない。
「それは…」
「連れていくにゃん?」
猫ニャンは念を押す。
「いやあ、そんなに面白いものでもないと思うよ。
とくに子供向けじゃないし」
「そうそう、リムちゃんには少し早いかな」
「リムにはもっと面白いもの見せてあげるよ。
子供用の演劇とかやってるんだ。
あれのほうがいいよ」
「そうじゃ。骸骨のダンスなんてどうじゃ」
みんな連れていきたくないみたい。
そらあ、そうだよな。
「いくニャン」
「でも…」
「行くニャン」
「はい…」
あれっ?押し切られた。
他の三人が返事をしてしまった我をすごい目でにらんでいるのだった。