白銀美桜14
一夏が前にでる。
ひとりのチンピラはその動きについていけない。
一瞬で懐に入り込んで、ボディにパンチを決める。
チンピラはその場でどさりと倒れる。
それから、美羽の相手は腰に剣を下げていてそれを抜く。
そのまま、美羽に斬りかかってくる。
あれって鉄だよね。
それにくらべて美羽は木の棒。
剣が当たると思った瞬間に相手の体勢が崩れる。
その額に美羽が棒を振り下ろす。
相手はそのまま伸びてしまう。
「用心棒ならいらないわ」
クールに美羽が言う。
「おまえら。俺らを怒らせたらどうなるか」
まんなかの兄貴分らしいのは、向かってこない。
典型的な新喜劇の悪者だ。
わたしたちの周りに、近くの露店の人とか集まってくる。
美羽と一夏の活躍に拍手を送っている。
たぶん、こいつら嫌われ者なんだろう。
「どうなるっていうの?」
一夏が腰にてを当てて睨む。
「お前ら。覚えてろ」
兄貴分は、逃げていく。
部下を置いて。
こういうところからも、大した奴じゃないのがわかる。
あれっ。
なんか向こうで今の人。
胸倉をひっつかまれて、つるされてるけど。
あ、あのおじさん。さっき握手会で金貨をくれた人だ。
それにまわりを囲むのは、派手なおねえさんとおじいさん、それと詩織のところに並んでた少年。
なんか目立つひとたちだな。
一度、おろされて、謝ってるし。
そのうえ、肩を組まれてどこかに連れていかれてる。
あの人たちってなんなの。
「じゃあ、宿に帰ろうか」
「うん」
「夕食、豪華にできそうだね」
「ちゃんと会計してからね。
それに贅沢ばっかりはしてられないわよ」
みんな分担して荷物を持って帰っていく。
むこうではマネージャーとか劇場の人がこういうのやってくれてたんだな。
わたしは向こうの裏方の人に感謝するのだった。