白銀美桜06
リムちゃんとの別れ。
すごい可愛い子だったな。
むこうの世界でもトップアイドルになれそうな才能。
でも、こっちの世界に残るっていうんだから。
こっちの世界でジュエルボックスをやっていくっていうんだから。
それは、リムちゃんが決めたことだ。
「そろそろじゃな」
ノスフェラトゥさんが魔法陣を見上げる。
もとの世界にもどる時間。
思い返せばいろいろなことがあったな。
いきなり、こっちの世界へ飛ばされて、すごく不安だった。
でも、メンバーのみんなと力をあわせて、こっちでもアイドルをすることができた。
思いっきり歌うことができた。
そして、リヴァイアさんたちが全力で推してくれた。
だから、今のわたしたちがある。
また、いきなりこっちの世界を離れることになるなんて。
これからいろいろやりたいこともあった。
でも、元の世界には戻りたい。
おかあさんとかお父さんとか妹とか、心配しているだろうし。
ずっとこっちの世界ってわけにはいかない。
だから、いいタイミングなのかも。
これ以上、この世界にいたら帰りたくなくなってしまう。
みんなすごくいい人ばっかりだしね。
わたしたちのいままでやったことはリムちゃんが引き継いでくれるだろう。
リムちゃんがすごくがんばっていたのは知っている。
いちばんあとに入ったメンバーなのに、全部の歌とダンスを覚えてこなしていた。
練習が終わってからも、ひとりで復習していたのも知っている。
そして新しいユニットの子にもちゃんと教えていた。
だから、リムちゃんに任せたら大丈夫だ。
わたしたちの上から光の球がゆっくりと下りてくる。
これがゲートなのかな。
スタッフの人もこっちに来て、わたしたちを囲む。
わたしたちは彼らに手を振る。
みんなも手を振ってくれる。
そろそろ、お別れなんだな。
涙が止まらない。
わたしたちは光につつまれる。
「みなさん、ありがとうございます」
美羽がお礼を言って、みんな深く頭を下げる。
この世界での卒業。
だんだん、光がつよくなってみんなの姿が見えなくなる。
そして光が弱まっていく。
まわりの景色が見えるようになる。
わたしたちのいるのは白い殺風景な部屋。
そう飛ばされる前にいたあの劇場の控室だった。




