空の女王フェリクス03
握手会だって?
行くっきゃないでしょ。
大銅貨だって。
持ってるわけないっしょ。
まあ、なんとかなるに決まっている。
とりあえず、価値のあるものを渡せばいいんでしょ。
それならとっておきの物がある。
わたしは、佐那ちゃんの列に並ぶ。
それにしても、すごい良かったな。
あのダンス、すごい表現力だったな。
わたしは目に焼き付けた佐那ちゃんのダンスを思い出す。
自然と笑みがこぼれる。
クククク。
あっ。声が漏れてた。
それによだれも。
周りの人は怖いものを見るようにわたしを見る。
見世物じゃねえぞ。
わたしが睨むとみんな目を反らす。
そういえば、なんかわたしの前と後ろ、ちょっと距離とりすぎじゃね。
あ、やっとわたしの番。
「ありがとうございます」
「ええ、いいものを見せていただいたわ」
わたしは一枚の羽根を渡す。
そう、冒険者たちが命がけで狙っているフェニックスの羽根。
つまりわたしの羽根だ。
「え、これ?」
佐那ちゃんは困ったようにわたしを見る。
「あれ、フェニックスの羽根だぜ。
たぶん、ギルドに持っていったら1000万ゴルはくだらないぜ」
後ろから驚きの声。
この美しい羽根、5000万ゴルでも安いわ。
「だめです。
こんな高いもの受け取れません」
「いえ、受け取ってほしいの。
それにこんな羽根、また生えてくるし」
「え?」
「とにかく、これでもっといいライブをしてほしいの。
次のステージに期待してるわ」
「わかりました。
まだ、始めたばっかなんで、足りないものばかりです。
なにかでお返しします」
「いいの。
それより、困ったことあったらなんでも行ってね。
おねえさんがなんとかするから」
「ありがとうございます。
これからも応援してください」
そう言って、佐那ちゃんはわたしをハグしてくれる。
最高!持って帰りたい。
これなら、羽根くらい全部抜いてもいいわ。
わたしは、この幸せをかみしめるのだった。
やばい、失神しそうだ。