原初の悪魔 クロウ12
そこから魔術の応酬が始まった。
ワイトの魔法とタリスの魔法の応酬。
それは、まるで魔法対戦。
ただ魔法の戦いというより、読みあい、駆け引きの報酬だ。
相手が何を出してくるかを読み対応する。
それも一手先だけじゃなく数手先までの。
「なかなかやるわね」
「ああ、あんたもじゃ」
好敵手同士、口元に笑いを浮かべる。
こんな自分の力をだしたのは初めてなんだろう。
「そろそろ終わりにしようか」
「そうじゃな。
そろそろじゃな」
タリスの前に魔法陣が現れ、そこから無数の魔法が放たれる。
火、氷、土、雷、闇。
すべての属性を防ぐことはできないだろう。
ワイトがマントを翻すと、ワイトの前に不死者の軍勢が現れる。
タリスの魔法は軍勢に命中し、粉砕する。
ただ、不死者を倒すだけで、ワイトには届かない。
ワイトは不死者の軍勢を盾として使っているのだ。
不死者はすぐに補充される。
この壁のやばいところは、軍勢に入り込まれるわけにはいかないことだ。
つまり無視することができないのだ。
ただ、タリスの攻撃はだんだん力なくなってくる。
たぶん魔力切れだ。
ワイトはこれを狙っているのだ。
ワイトの行っているのは召喚。
魔力はあまり使っていない。
そのために魔法障壁をつかっていないのだ。
タリスの魔力が切れた瞬間をねらっているのだ。
ただ、そんなにうまくはいかない。
タリスの武器は魔法ではないからだ。
魔法はあくまでタリスの趣味。
本来蜘蛛の悪魔であるタリスの能力は糸を操ること。
まだ、その力を使っていない。
やはり、タリスの勝ちはゆるがない。
「そろそろ終わりじゃ」
ワイトが前に出る。
「そうね。終わりね」
タリスは答え不敵な微笑を浮かべるのだった。




