原初の悪魔 クロウ05
「長く生きてるとえらいのか?」
スライムがわたしをあおってくる。
「そうだ。この世界の生物を創ったのはわたしたちなのですよ」
「だからといって、ぼくの好きな音楽を汚すことはゆるされないな。
劇場もこんなにしちゃって。
今日のライブは中止だね。
楽しみにしていたのに」
「あなたも戦うつもりですか」
「当然だよ。
ぼくは怒っているんだよ。
それにジュエルボックスを排除するって?
そんなことゆるされるわけないじゃん」
わたしの顔を覗き込んで言う。
その迫力に怯みそうになる。
どういうことだ。
こいつはスライムだろう。
その時、舞台からジュエルボックスたちがこっちに歩いてくる。
その中のひとりがドラゴンの手を握って歌いだす。
そのとたん、ドラゴンの傷がふさがっていく。
それからフェニックス。
手をあてると氷がどんどん溶けてく。
やがて、氷は全解してフェニックスの顔に生気が戻る。
今度はワイトのところに行って手をかざす。
核が光をとりもどし、粉々になった身体がそれに引き寄せられていく。
なんだ。この力は。
神の側にこういった能力に長けた者がいると聞く。
やはり外来種は危険だな。
そのあと、中央の少女の合図で音楽が始まる。
この世界ではあまり聴かない激しい音楽。
それから、自分たちを鼓舞する歌詞。
身体全体を使った激しいダンス。
まさに異世界の文化だ。
それだけではない。
彼女たちのパフォーマンスによって、何か光の粒みたいなものが降ってくる。
それが魔王たちを包み込む。
魔王たちはどんどん回復していく。
これはわたしたちの知らない未知の力。
いまのうちに止めないと。
「やめろ!」
わたしは叫んで一歩踏み出そうとする。
「おまえの相手はぼくだよ」
スライムはそう言ってわたしの腕を掴むのだった。




