不死の王ノスフェラトゥ03
わしは熱にうなされるように一夏の列にならぶ。
金、それはこないだの軍を退けたときに集めておいた。
べつに使うことはないんだが、元人間の習性が金目のものを集めてしまう。
武器とかはアンデットたちに装備させるが、お宝は逆に使い道がない。
あ、スラリムのやつ。
財布ごとわたしやがった。
あの詩織とかいうメンバーの気をひこうというのか?
でも、あいつは若いな。
あれは全然効果ないのだ。
わしも人間だったころ、キャバクラというところに通ったことがある。
ある娘に入れ込んで相当の金を使ったことがある。
いわれるままに高い酒を飲んで、貯金まで手をつけて、そのうえ借金まで。
それが、王と一緒に生き埋めにされる一因になったのだ。
ある日、花束を持ってキャバクラに行くと店の前でその娘とホストが話しているのを聞いてしまった。
「じゃあ、そろそろうんこマンが来るから」
「あ。あいつ。あのキモイやつ」
「そうそう、あいつ見てるだけで吐きそうだけど、金払いはいいから」
「無理無理、あいつは無理っしょ」
「まあ、金のためだからしゃーないわ。
それじゃあ。今晩。お店にいくからね」
そう言ってホストに手を振る。
なんだって?わしはおまえにすべてを。
それに、学生時代のあだ名をなぜ知ってるんだ。
わしはそのまま家に帰って酒を飲んで泣いた。
まあ、大昔のことだからあんまり覚えていないが…。
一夏たんは天使だからそんなことはないにしても、財布ごとって粋じゃない。
わしは大銅貨一枚をだして握りしめる。
わしの番だ。
「今日はありがとうございます」
一夏ちゃんの言葉に頭の中が飛んでしまう。
わしは、震える手で大銅貨をわたす。
その手を一夏たんが両手で握ってくれる。
「……」
言葉がでてこない。
「おじいちゃん。大丈夫ですか。
次も来てくださいね」
一夏ちゃんが耳元で大きな声で話しかけてくれる。
耳が遠いと思われたのか。
「……」
やっぱ言葉がでてこない。
わしは手を放して、うしろに下がる。
そのわしに一夏たんは笑顔で手を振ってくれたのだった。
やっぱり、一夏たんは天使すぎるのだった。