原初の悪魔 クロウ03
「本当にこの子たちの歌と踊りは素晴らしいわ。
リムちゃんだけ殺せば、それでいいのではないかな」
蜘蛛もそう言うが、この世界に別世界のものが存在することの重大さをわかっていない。
特に文化というものは、世界を毒するのだ。
人間の文明が進化することにより、どれだけ世界が変わったか。
その時、警備員が2人こっちに近づいてくる。
大柄な男たちだ。
警備員というよりボディガード。
黒いサングラスをしている。
「ここは関係者以外立ち入り禁止です。
すぐに出ていってください。
ライブは夕方からです」
わたしたちに気が付いたのだ。
こういうことがよくあるのだろう。
慣れた感じでわたしたちに退場を促す。
「いや、俺たちは猫に用事があるんだ」
獅子はそう言って警備員を払いのける。
それだけで、警備員は階段状の客席を転がり落ちる。
派手な音が鳴り、ステージの動きと音楽が止まる。
ステージ上ではこっちを指さして何か言っているようだ。
その中にケットシーはいない。
どういうことだ。
そして、こっちに男たちが近づいてくる。
大柄なやつらばかりではない。
「あなたたちはなんですか?
ここはジュエルボックスの劇場です。
そして、今はリハーサル中です。
ファンの方ですか。
ライブで最高のものをお見せするために彼女たちは練習をしているのです。
邪魔をしないでください」
スーツの男がわたしたちに話しかける。
「リムちゃんを出してくれる?」
「リムのファンですか。
リムは姉妹グループの練習に参加しています。
リムが中心となって新しいユニットを考えています。
それにリムを出すわけにはいきません」
「どうすればリムちゃんを出してくれるの?」
「だから、あなたがたのようなわけのわからないファンの前にジュエルボックスのメンバーを出すわけにはいきません」
「じゃあ、出てくるようにしてやろう。
ここで暴れたら絶対に猫は出てくるはずだ」
そう言って獅子は吠える。
そのとたん劇場の屋根が吹っ飛ぶのだった。




