白銀美桜12
アンコールも終わって、すこし休憩する。
あとは握手会だ。
わたしは中央から右側に立つ。
並んでくれるかな。
わたしたちが立ったとたん、その前に並んでくる。
えっ?多くね?
ひとりあたり20人くらいの人が並ぶ。
いちばん少ない詩織でもそれくらいいる。
さて、握手会のやり方は教えてもらった。
きちんとファンの目を見て話すこと。
大銅貨一枚を受け取って、握手をする。
普通はCDとかグッズについてる握手券で握手するんだけど、握手するだけでお金をもらうってなんかすこし抵抗がある。
「今日はありがとうございます」
「歌すごくよかったです。
また、次も来ます。
がんばってください」
そう言って手を握る。
すごくキラキラした目をしている。
ファンって向こうもこっちも変わりない。
あれっ、あの大きな人、目立つな。
わたしの列にプロレスラーのようなおじさんが並んでいた。
だいたいは20歳から30歳くらいの若い人が多いんだけど。
詩織のところには少年。
佐那のところには派手な女の人。
一夏のところにはおじいさん。
ちょっと目立つ人がいる。
見た目だけじゃなくて、なんかオーラみたいなのが違う。
こんな人たちと握手しても大丈夫なのかな。
よく考えたら、この剣と魔法の世界で軽率だったかな。
でも、ここまでライブを見てくれて、たくさんの拍手をしてくれたファンだ。
わたしは信じる。
「ありがとうございます。
次も来てくださいね」
わたしは笑顔で握手会をこなしていく。
だんだん、おじさんの番が近づいてくる。
おじさんの前の人が終わる。
「ありがとうございます」
「ああ…」
「すみません、大銅貨一枚おねがいします」
「あ、大銅貨はないんだがこれで」
おじさんはわたしに金貨を渡す。
え、初めて見るけど、金貨って10万ゴルとかだったような。
「あの、おつりとか用意できないです」
わたしは金貨を返す。
「いや、おつりはいらない、でしゅ」
大きなおじさんは真っ赤な顔をしてそういうのだった。