不死の王ノスフェラトゥ02
わしは王都パルに来ていた。
最後に人間の街でも目に焼き付けておこうって感じだな。
ざまあみろ。
これも昔わしをうんこマン扱いした報いなのだ。
いや、昔のことはあんまり覚えていないがな。
なんか、そんな気がするだけだ。
すれちがうやつらはみんな幸せそうな顔をしている。
わしはあんまりいいことなかったな。
そういうのも、もうすこしで終わる。
リア充たちの姿を最後にみておいてやろう。
わしを生き埋めにしたやつら。
おまえらがあんなことをしなければ、人間はもう少し長く生きられたかもしれないのにな。
人間が滅ぶのはおまえらのせいだ。
まあいい。
そういえば、なんか中央広場の方に人が集まっているぞ。
わしはその方向に向かう。
あそこはセミプロの芸人が歌や踊り、演劇を披露している場所だ。
昔からにぎわっていた場所。
最後に拙い芸でもみてやろうか。
ちなみにわしは学芸会の劇では木の役だった。
いるか?木の役。
大道具だけでいいだろう。
木の真ん中から顔を出して、犬におしっこをかけられる役だった。
まあ、昔のことはあんまり覚えていないが。
それでも、わしにやさしくしてくれる女性がいた。
すこし男勝りで、いじめっこたちにわしをいじめないよう言ってくれた。
ジュリア、それなのにわしをいじめたあの男と一緒になるなんて。
まあ、昔のことだ。
わしは人だかりの中をかきわけて前にでていく。
「なんだ。このじじい」
「わりこむんじゃねえぞ」
口々にわしを罵るやつら。
それを麻痺の魔法で黙らせる。
わしの前で歌とダンスが始まる。
え?あの娘。
ジュリア。
わしの目の前にあの活発な子だったジュリアに瓜二つの娘。
一夏っていうのか?
かもしかのようなしなやかな身体で踊っている。
わしの目は一夏にくぎづけにされる。
わしは魂が抜けたようになって、一夏の一挙手一投足を追いかける。
どんどんステージが進んでいく。
アンコールが終わって、わしは正気を取り戻す。
夢のような時間はおわったのだ。
「この後握手会をやります。
大銅貨一枚で好きなメンバーと握手ができます。
好きなメンバーの前に並んでください」
わしはゾンビのようなよろよろとした足取りで一夏たんの前に並ぶのだった。