スライム王 スラリム03
さて、人間ってどうなっているかな。
ぼくはあの先生と生徒とかいうのを全滅させたあと、ひとりの生徒の姿を借りて王都に戻ってきた。
もちろん、人間を滅ぼすかどうか考えるためだ。
人間って変異種だし、普通の生物からして理解しがたい。
だから少し興味がある。
ぼくは記憶喪失の生徒のふりをして王都に戻った。
そして、さっきのクラスが全滅したことを伝えた。
「君は、どうして助かったんだね」
大人たちはぼくに問う。
ぼくは何もいわず首を左右に振る。
「つらい目にあったんだね」
大人はみんなぼくに同情する。
え、君に触ったら溶けないのって?
ぼくは属性をいろいろ変えられるんだ。
無害なスライムになることも簡単さ。
それで、いろいろ医者とかに見せられて、いちおう大丈夫ってことで、解放されたんだ。
今は町の中央の公園を歩いている。
ぼくは人間は嫌いだけど、この公園って好きなんだ。
いろいろおいしいものを売ってるし、歌を歌っている人、楽器を演奏している人なんかもいる。
そういう意味では人間を滅ぼすっていうのもどうかなって思うんだけど。
でも、他の生物に害があるんじゃね。
人間の作り出す文化なんて、あってもなくてもどうでもいいことだからね。
あれ、あっちにすごい人があつまってる。
何があるんだろう。
でも、子供に化けたから何があるかわからないぞ。
しかたない。
ぼくは身体をもとに戻して、人々の足元をくぐって一番前にでる。
そこで、元の少年の姿に戻る。
目の前では5人の少女が立っている。
真ん中の少女の合図で曲が始まる。
なんだ?この歌は。
すごい引き込まれていく。
とくにこの旋律。
すごい、なんか魂に響いてくる。
この歌を作ったのは。
あの一番小さな子だな。
歌も踊りもすごいけど、この旋律にぼくは魅了される。
音の振動がすごく気持ちいい。
ぼくは音楽の海におぼれていく。
つぎからつぎへとすごい曲が流れてくる。
いままで聞いた曲なんて、稚拙なものだった。
和音にしてもリズムも斬新。
すごい、すごいよ。
「じゃあ、最後の歌です。
いままで聞いていただいてありがとうございました」
ぼくの夢の時間はあっという間に終わりを告げるのだった。