ガニア帝国皇帝クロノス01
ようやく時が訪れた。
パトリック王国に革命が起きただ。
国内はかなり混乱しているという。
我々の調査によれば、革命を起こしたのは文官だって話だ。
そういう国家は軍隊を立て直すのに時間がかかる。
それが整わないうちに攻める。
スピード勝負だ。
わたしの統治するガニア帝国は広大な領地を持つ大国だ。
しかし、その場所は大陸の北に位置する。
その上、多くは森に覆われ、農業に適した土地も少ない。
そのため、飢えた国民も多い。
ただ、わが国には天然資源が豊富だ。
それを他国に売ることによって裕福な国にすることが可能なのだ。
しかし、それを運ぶための大きな港がない。
大陸の西側にも港があるが、冬になると凍ってしまうのだ。
それで、陸路で運ぶこととなるがどうしてもコストが高くなってしまう。
西側の港が使えたとしても、他国へ行くには大周りになってしまい効率がわるい。
港の確保には大陸の東側へ行くか、南に侵攻するかだ。
わたしが若いときに東側への道を作ろうとしたことがあった。
東に出るためには暗黒の森を通る必要がある。
ただ、最短ルートなら10キロ程度の距離を切り開けばいい。
そこに広い街道を開こうとしたのだ。
その時、わたしの城にひとりの幼女が現れた。
見た目は驚くほどの美少女で頭に猫の耳、細く長い尻尾を持っていた。
それがいつの間にか玉座の前に立っていた。
「おまえが皇帝にゃん」
その少女はわたしにそう問いかけた。
「おまえは誰だ」
「リムにゃん。原初の悪魔ケットシーにゃん」
「そのリムがわたしになんの用だ」
「暗黒の森にいたやつらは全滅させたにゃん」
悪びれずにそう言う。
まさか、それなりの精鋭を配置したはずだが。
たぶん、子供のたわごとだろう。
「そうか。
それでどうしろというのだ」
その時のわたしには怖いものはなかった。
わたしは生まれながらの皇帝だった。
幼少の頃から帝王学をたたきこまれていたのだ。
もちろん、そのとき、目の前の少女に恐怖することなどなかった。
しかし、わたしはその日知ったのだ。
世界には逆らってはいけないものが存在することを。