マネージャーキリシュ17
なんか奇跡が起きたみたいだ。
魔法陣は敵の方に移動し、敵の上で発動した。
たぶん魔導士が何か間違えたんだろう。
大規模魔法の構築は難解だというからな。
とにかく危機は回避した。
ただ、あのときじじいが何かやっていた。
もしかして、魔法を何かしたとか。
まさかな。ドルオタのじじいだもんな。
そんなことできるわけがない。
ただ、ぼけて自分がなんでもできると思っているだけだ。
相手は逃亡を始める。
このまま逃げてくれてもいいが、できたらやりたいことがある。
敵のゴーディとかいう隊長を捕らえるのだ。
そうすれば情報も集められるし、相手に恐怖を植え付けることができる。
とにかく、ここは守りが固いと思わせることだ。
おれは騎馬でゴーディを追いかける。
そしてこの本隊は前線を上げる。
つまり追いかけるふりをするのだ。
ここで何もしないと疑われる。
この本隊が張りぼてであることを…
「みんな!いくぞ!」
俺は声をかける。
「おーーーーーーーっ」
兵たちは答える。
そして、前に進み始める。
え、なんか速くない。
みんな、槍や刀を掲げて走っていく。
いや、ふりだけでいいんだ。
逆にまじで戦われたら困る。
市民の寄せ集めだってばれてしまう。
そうすれば、相手は反転して攻めてくるかもしれない。
「みんな、ゆっくりでいい。
相手を牽制するだけでいいんだ」
俺は叫ぶ。
しかし、みんなには届かない。
なんか、初陣で興奮しているのだろう。
みんな全力で走っていく。
ってみんな鎧を着たままなんだけど、馬より速いんじゃね。
それに武器も相当の重さだ。
すぐに相手の殿においつく。
ゴーディのいる隊だ。
みんなは槍や剣を振り回す。
後ろから襲いかかられた敵はつぎつぎと倒される。
そして、ひとりの槍兵がゴーディに追いつく。
そのまま、飛び上がってゴーディともつれあって馬から落ちるのだった。