マネージャーキリシュ16
この空の魔法陣は…
やばい。
これは大規模魔法だ。
これほどの規模のものは見たことがないが、そういう魔導士がいると聞いたことがある。
すべての魔力を解放して一発だけの魔法を打つ。
一発屋と呼ばれる魔導士。
その魔法は村ひとつ焼き尽くすという。
「逃げろ!
みんな、魔法陣からできるだけ遠くに!」
俺は叫ぶ。
「ふむふむ。
まあ、そこそこじゃな」
じいさんが魔法陣を見てぶつぶつつぶやいている。
やっぱりボケているのか。
「ただ、無駄が多いんじゃ。
こんな魔法、どうにでもなる。
まず、署名じゃな。
ここも簡単に破れる。
多分、誕生日かなんかだな。
とにかく、2桁の数字はないな。
せめて、4桁、それも文字も入れたほうがいい。
ほら破れた。
16か。これで魔法式はいじり放題だ。
わしは運動とかはダメだが、勉強だけはできたからな。
それに3000年の積み重ねもある。
さて、どうしようかの。
そうだ。これをこのまま返してやろう。
自分の魔法を自分で浴びてみるというのも勉強になるだろう。
まあ、生きてればの話だがな。
ここの座標をこういじって、こうする」
じじいは杖を振りながら、魔法陣を見上げている。
たぶん、自分を大魔導士だと思っているんだろう。
とにかく、ここから逃がさないと…
「ノスフェラトゥさん、逃げてください。
ここは危険です!」
俺の声に振り返るが、全然危機感はない。
なにを言ってるんだって顔。
俺はじじいに近づく。
もう、老い先は短いだろうが、ここに誘ったのは俺だ。
ただ、俺がさそったのはリヴァイアのおっさんだけなんだが。
こいつは勝手についてきただけだ。
「大丈夫じゃ。ほれ」
じじいが空を指さす。
その先を見ると、魔法陣は敵陣のほうに動き始める。
そのまま、敵の真上まで動いて、空がオレンジ色に輝く。
そして、敵陣のど真ん中に炎の竜巻が生じるのだった。