第六師団中隊長ゴーディ13
「あれ、そういえば。
ぼくが負けたときどうするか決めてなかったね」
「……」
わたしは言葉もでない。
パピオンがお前を殺すということだったんだ。
しかし、このゲームは最初から成立していなかったんだ。
それくらいの力の差だったのだ。
「まあいいか。
そうそう、これは大事なものだから返してもらうね」
子供は貫かれたパピオンの手から帽子を取ってかぶる。
宮廷侍従長、恐ろしいやつだ。
これで完全に決まった。
撤退だ。
ここを攻めるのは、この程度では無理だ。
せめて一師団、いや二師団は必要だ。
こんなやつらと戦うには、数で押すしかない。
「バルコス。
行けるか」
「はい、大丈夫です。
派手なやつを一発ぶっぱなしてやります」
バルコスの頭の上には、大きな魔法陣が光っている。
これはかなりの大技。
こいつは、派手な魔法をぶっぱなすことしか頭にない。
いつもは、広い荒地とかで魔法をぶっぱなしている。
前に戦争で使ったことがあるのだが、その時は村がひとつ消えてしまった。
それがやりすぎだと言われて、俺のところにたどり着いた。
そのバルコスが自分の力を見せるときが来た。
これをぶっぱなせば、相手にすごい被害がでるだろう。
そして混乱する。
その間に撤退をするのだ。
わたしは伝令を使って、全員に撤退の指示をだす。
後ろの方から撤退を始める。
よしもう少しだ。
俺は逃げ出すタイミングを待つ。
バルコスは集中する。
あとはぶっぱなすだけ、俺の合図待ち。
「よしいいぞ。派手にやってくれ」
俺は頃合いを見て、バルコスに合図をする。
「ファイアーストーーーーーーーーーーム!」
バルコスは大きな声で叫ぶ。
そのとたん、敵の上の魔法陣が強く光る。
そう、大規模魔法はその発動に時間がかかるのと、場所がわかりやすいとの欠点を持つ。
しかし、今は関係ない。
撤退ができればいいのだ。
さいわい、敵軍に動きはない。
軍にはこういう時の対処方ってあるはずだろ。
なのに、誰も逃げようともしないで、魔法陣を見上げているだけ。
どういうことだ。
そう思ったとたん、頭上の空が赤い光につつまれるのだった。