第六師団中隊長ゴーディ12
さすがパピオンだ。
きちんと時間を稼いでくれる。
それにしても、やつのやっていることはイカサマだ。
なんせ、やつの使うのは空間魔法だからな。
遠くに行くのは無理だが、10メートル四方くらいなら自由に移動することができる。
だから、やつはどの箱にも入っていない。
当てることなんてできない。
なんせ、選ばなかった箱に移動すればいいだけなんだからな。
案の定、子供はもう2回間違えている。
しかし、こんな勝負受けること自体がバカ。
やはり、子供だな。
さて、これで終わりだ。
子供が殺されるのは、あんまり見たくないが、ここは戦場。
それに、あいつは侍従長のひとり。
タスキにそう書いてあるのだ。
魔法勝負に持ち込まなかったのは良かったのかもしれない。
こいつに時間を与えたらバルコス並みの魔法を打たれたかもしれない。
「じゃあ、次はここ」
いちばん左の箱のところに行って開ける。
これで終わりなのに全然躊躇がない。
確信したようにドアを開ける。
もちろん、その中は空だ。
「フハハハハハハハ。
これで終わりです。
正解は右、うぶっ、ぎゃああああああ」
いちばん右のドアが開く。
それとパピオンの悲鳴。
何があったんだ。
「あーあ、ここが正解だったんだけどな。
道化師さんにとって」
子供はつぶやく。
どういうことだ。
一番右の箱のドアが開く。
その中には硬い金属で串刺しにされたパピオン。
どうしたんだ。
「さっき、ドアを開けた時に迷宮のわりと下層にいるトラップスライムを入れておいたんだ。
ぼくが確認した、右と真ん中にね。
このスライムを踏むととんがって硬くなるんだ。
それで冒険者は貫かれてしまう。
メタルスライムの亜種なんだ」
「ずるいぞ!」
俺は子供に向かって叫ぶ。
「だって、あのピエロさん空間魔法の使い手でしょ。
消えたり現れたりできるんだから、こんなのわかるわけないじゃん」
子供はそう言って右の箱のほうにゆっくり歩いていくのだった。