第六師団中隊長ゴーディ09
これで終わりだな。
ファーゴの奥義、百足突きだ。
まるで100本の槍があるように無数の突きを繰り出す。
その動きは高速すぎて見えない。
あとは、串刺しにした女を空に掲げるだけ。
そう思ってファーゴを見ると、その動きは止まっている。
そして、槍を縛られた両腕で受け止める女。
もしかして、あの攻撃を上半身の動きだけで避けたのか。
その上、槍を捕まえるとは。
どういう動態視力なんだ。
「はなせ」
「まあ、いいけど。
これがおまえの最大の攻撃?
あまりにしょぼくない?」
「どういうことだ」
「遅すぎてあくびが出るってことよ。
せっかく戦える順番になってっていうのに、はずれもいいとこだわ」
ファーゴは力任せに槍を引こうとする。
しかし、槍はびくともしない。
「この程度の敵ならトカゲで十分だったわ」
「なんだと!」
「つまらないってこと。
キリシュ、この程度のやつを倒してバイト代をもらっていいの?」
「ええ、いいですよ」
どういうことだ。
ファーゴは性格に難はあるが、腕は確かだ。
それをバイト感覚で倒すというのか。
舐めるな。
「じゃあ、やっちゃうわ」
そう言って女は指先に小さな火をともす。
あいつは剣士じゃなくて魔導士なのか。
ファーゴは危険を感じて逃げようとする。
女はそこから跳んで、ファーゴの方に向かう。
跳ぶ、違う、そんな不自由な動きではない。
飛ぶ、という表現が正しい。
鳥のようにだ。
女はファーゴの近くになると振り上げた両手を振り下ろす。
こいつも拳士なのか。
八本剣って一体。剣を使ってたのは最初のやつだけじゃないか。
この女、バイトとか言ってたし。
ファーゴは女が手を振ると、ファーゴの上半身が一瞬で消し炭になり崩れ落ちるのだった。