マネージャーキリシュ07
「この前の件、受けさせてもらう」
俺はマルクスとウィラードの前でそう宣言する。
もう引くわけにはいかない。
いずれにせよ、ジュエルボックスのためには戦うしかないんだ。
それを美羽に教えられた。
彼女たちに戦わせるわけにはいかない。
俺にどれくらいのことができるかわからないが、やるしかない。
「キリシュさんが手伝ってくれるのなら百人力です。
これで勝機もでてきました。
あの王のためなら、何もする気はありませんでしたが。
わたしも新しい国のために全力を尽くしましょう」
ウィラードは胸をたたく。
「それで、作戦はあるのか?」
「ええ、この国には建国の軍師コウメイの残した戦略書があります。
実際にコウメイが昔使った戦略は知られています。
しかし、秘伝とされている軍略もあります。
これを王の宝物庫から持ってきました」
「具体的には」
「やはり局地戦での勝利を積み重ねるしかないですね。
キリシュさんが本隊を率いて、とにかく守ってください。
その間にわたしが精鋭を率いてひっかきまわします」
「それでも、勝機は薄いな」
「ええ、ほとんど勝ち目はないでしょうね。
しかしやらないよりましです。
わたしたちの国をタダであげるわけにはいかないでしょ」
「わかった。
俺も考えていることがある。
俺も傭兵と冒険者からなる遊軍を作ろう。
八本剣とはいかないが、帝国軍をひきつけることはできるだろう。
その間に辺境軍が勝利しろ。
そのほうが確率は高い」
「それは決死隊となります。
たぶん、生きて帰れない」
「しかし、勝てる確率は上がる。
最初のやり方では、全滅する未来しかみえない」
「キリシュさんは死ぬ気ですか」
「いや、そうじゃない。
双剣の悪魔キリシュを舐めるな。
それに考えていることもある」
「わかりました。
なんか昔のキリシュさんが戻ってきたみたいですね。
正規軍はわたしの副官のマズローに任せましょう。
存分に暴れてください」
そう言ってウィラードと俺は拳を打ち付けあうのだった。