マネージャーキリシュ05
さてと、しかたないな。
俺は大統領のところに向かう。
その前にやらなければならないことがある。
やはりあいつらの力を借りなければならない。
いつものたまり場にいく。
小さな酒場だ。
その隅の席でいつもたむろしているのだ。
「キリシュ、ちょっとこっちに来いよ」
俺が酒場に入るなり、リヴァイアのおっさんが声をかける。
たぶん、またチケットを融通しろって話だろ。
まあそれも交渉材料のひとつだ。
なんだかんだ言って俺はこいつらの力を認めている。
八本剣とはいかないとしても、おっさんが俺より強いことは認めなければならない。
このおっさんと姉さんの前に出るとなぜかあのドラゴンと対峙したときのことを思い出してしまうんだからな。
「なんですか、リヴァイアさん」
俺は営業スマイルを浮かべて彼らの席に行く。
「どうもこうもない。
この国はどうなってしまったんだ」
「といいますと」
「我の持ってくる金やら宝石が売れなくなってるんだ」
「聞いてゴクラクチョウの羽根もよ」
王が倒れてから、この国はインフレとなっていた。
それも、生活物資の値上がりがひどく。
高級品は売れなくなっていた。
とにかく、政情が落ち着くまではこういう状況が続くだろう。
人々は生きていくのがいちばん大事なんだからな。
普通のルートではそういう高価なものは売れないだろうな。
「そうなんですか。
ちょっとこの国は王が倒れてから不安定になっていますからね」
「そうなんじゃ。あの王とかいうのを倒さなければよかったんじゃ。
それをこのバカ共が暴れるから」
「じいちゃん。それは言っちゃだめなやつだよ」
じじいが口をはさむのをあわててスラリムが止める。
このじじいはボケているからな。
「このままじゃ。ライブのチケットも買えなくなる。
それに投げ銭もできなくなる」
おっさんは頭を抱える。
このおっさんたちはライブのチケットの融通とかは言ってくるが支払いは良い。
それに、グッズとかも必ず買ってくれる。
いわば上客だ。
ここにつけこめば上手くいく。
「そうなんですか。
それではアルバイトなんてどうでしょう。
実はいいアルバイトがあるんです」
俺は4人の前で微笑みながら本題を切り出すのだった。




