スライム王 スラリム01
本当にバカばっかり。
脳筋とボケ老人だから仕方ない。
まあ、今回はあの猫ニャンがいないだけましだろう。
あいつがいたら、もうこの城は跡形もなくなっているだろう。
そして、権力争いが起きて乱世になる。
そうなればライブどころじゃなくなってしまう。
だから、キリシュさんのやり方でいいと思う。
少し派手になってしまったけど、ヘイトをこっちに集めるのに好都合だ。
まさか、ジュエルボックスがこの国を滅ぼそうと考えているとまで考えないだろう。
ぼくたちは、芸人一座に紛れ込んで王を殺そうとした刺客。
そして、失敗して逃げ出すっていうくらいでいいだろう。
作戦を今話しても、フェリクスさんとリヴァイアさんは2歩くらいしか覚えておけない。
準備をしてからのほうがいいだろう。
ぼくはスライムの姿になって、衛兵の奥のほうに忍んでいく。
いちばん豪華そうな赤い服の男。
彼がたぶん衛兵の長みたいだ。
ぼくはその後ろで実体化する。
「あなたが、ここの長ですね」
衛兵長は振り返る。
「なんだ、おまえは。
子供じゃないか」
「ぼくたちは、王を倒しに来ました。
王はこの奥ですか」
「王を倒すだと」
「わたしたちは秘密結社JFCの者だ。
王を殺して、この国を潰してやる」
「そんなことをさせるか!」
衛兵長の両脇の衛兵がこっちに斬りかかってくる。
まあ、衛兵の中ではましなほうだ。
ぼくはその剣をたやすく避ける。
そのまま、触手を伸ばして両側の衛兵に攻撃する。
それでふっとぶ衛兵。
これはかなりの手加減をしている。
あのバカな人たちと違って、ぼくはちゃんと手加減ができる。
そして、ここでわちゃわちゃと戦うふりをして、失敗の演技をして、逃げる。
そうすれば、これは謎の秘密結社の仕業になるだろう。
JFCはジュエルボックス・ファン・クラブの略だ。
「衛兵長、俺らが力を貸そうか。
なんかおもしろそうじゃん」
衛兵長のうしろにいつの間にか8人の人間が立っている。
「八本剣のみなさん」
「たぶんこいつはお前たちでは無理だよね」
一番背の高い男がぼくを見下ろす。
「わかりました。お願いします」
衛兵長は引いて、そのかわり、一番小さい男がぼくの前に進み出るのだった。