白銀美桜05
ついに王宮ライブの日になった。
3日前から劇場でのライブはやめて、王宮ライブに集中している。
スタッフも総出で準備をしてくれている。
特に音響設備の移設は大変みたいだ。
この世界には音響設備はないんだから、もっと簡単なものでもいいのに。
詩織に妥協はない。
っていうか詩織は人使いが荒い。
あれっ?
あの人、いつもライブに来てくれるおじさん。
スタッフジャンバーを着て、働いてくれている。
もしかして、ファンの人からスタッフを募ったの?
でも、身体が大きいだけあって、無茶苦茶、力が強い。
大きなスピーカーを軽々と運んでいる。
向こうでジャージのお姉さんも働いているし、あの少年も、おじいさんまで。
いいのか、あんな老人働かせて。
でも、あの人は魔法使いみたいで、魔法でものを運んでいる。
とにかく、スタッフも頑張ってくれている。
だから、わたしたちにできることは、ライブを成功させるだけだ。
そのためにやるべきことはやっている。
あとは本番で最高の力をだすだけ。
そういうのってわたしたち得意なんだよ。
ライブで最高のものができることってよくあるんだ。
やっぱ、練習と違って、ライブはファンと一緒に作るものだから。
乗りに乗ったわたしたちは最強になるんだ。
王宮ライブでも、絶対最高のものができる。
わたしたちは最後の練習を終えて、くつろいでいる。
そこに王宮からの迎えがくる。
なんか仰々しい人たちだ。
それに偉そうだし、感じ悪い。
だからこそ、見せてあげる。
ジュエルボックス、最高のパフォーマンス。
わたしたちのために馬車が用意されている。
なんか、クッションもふわふわだし、さすが王様って感じかな。
そのわりに街には貧しい人が多い。
こんなところにお金を使っている場合なのかな。
そういえば、王族の悪口は聞いても、いいうわさをきいたことはない。
わたしたちが馬車に乗り込むと動き出す。
外の景色がゆっくりと動いていく。
向こうの世界の電車とか車みたいなわけにはいかない。
それに、タイヤと地面のガタガタをクッションでごまかしているというか。
あまり、快適とはいえない。
馬車はしばらく街の中を走り、王宮の門につく。
ここからは騎士隊の護衛も増え、なんか仰々しい感じになる。
王が暗殺されたりしたらダメだから、警備はきびしいのだろう。
わたしたちの馬車は確認が済むと、大きな門が開けられその中に入っていくのだった。