白銀美桜04
王宮でのライブの日が決まり、わたしたちはあわただしくしていた。
それがあるからといって劇場のライブを休むというわけにいかないからだ。
リーダーは手を抜かない。
正直言って、わりのいい仕事ではない。
使者の人はえらそうだし、褒美の額も少ないし。
やらせてやってる感が丸見えだ。
下賤な芸事を王宮でできるんだから光栄に思えってことらしい。
本当なら断る仕事なんだけど、マネージャーのキリシュさんは断らないほうがいいっていう。
断ったら、この王都でライブをすることができなくなるらしい。
まあ、どこにでもややこしいことはある。
とにかく、この世界のことはあんまりわからないから、マネージャーに任せるしかない。
わたしたちは最高のライブをするだけだ。
わたしたちは新しい曲の練習をする。
すこしクラシックの要素もいれた曲。
詩織が作ってくれた。
ダンスもバレエの動きを取り入れたものだ。
佐那はいろいろなダンスをマスターしている。
なんか一回みたら覚えてしまうみたいだ。
振付の基本は佐那が作る。
でも、それで終わりじゃない。
みんなで何度もやりながら、よりよくしていくのだ。
そこでは衝突もするけど、結局良いものができる。
やっぱ、佐那も美羽も一夏も天才だ。
わたしはダンスについて意見を言っても、無視される。
みんな、わたしが楽をしようとしているとか、そんなふうに思っているのだ。
確かに身体能力はわたしと詩織が低い。
リムも身体能力が高いから、とんでもないダンスを考え出す。
それも却下されることが多い。
リムのはダンスじゃなくてサーカスだから。
かわりに歌については、わたしが主導権を握る。
歌っていうのは表現力なのだ。
だから、ただ音程があってればいいというわけではない。
悲しい歌は悲しく、楽しい歌は楽しく歌わなければならない。
そういう部分はわたしの得意分野で、みんなの歌をチェックする。
音程とかは詩織のチェックだ。
詩織のチェックは案外厳しい。
こうやって、わたしたちの新曲は完成していく。
でも、本当の完成なんてない。
次にやるときはもっと良くなっているから。
とりあえず、今できるかぎりのパフォーマンスとなっている。
そして、王宮でのライブが近づいてくる。
最後の練習の日となる。
「王様っていろいろあるらしいけど、わたしたちには何も関係ない。
最高のライブをやるだけ。
そうすれば、絶対うまくいく。
そうだよね」
練習の最後に美羽が檄を飛ばす。
わたしたちは、それに大きな声で答えるのだった。