マネージャーキリシュ04
やっぱり、このおっさんただものじゃない。
身体から発散するこの闘気。
この近くにいるものはこれに気が付かないのか。
他のドルオタとかと親しそうにしているが、やつら、どんな身体をしているのか。
「じゃあ、また、リヴァイア氏」
オタクたちは、おっさんに挨拶して帰っていく。
「ええ、また美桜たんのすごさについてお話しましょう」
満面の笑みで挨拶を返すおっさん。
その笑顔がいちばん怖いんだが。
「で、話というのは?」
俺のほうに向き直る。
「いえ、今度、ジュエルボックスが王宮に呼ばれてまして。
王の前でライブをさせてもらうんです」
「もちろん、我も行くぞ」
「あ、でも、王宮に一般の人は入れないんです。
王の許可が必要なんです」
「じゃあ、ちょっとその許可とやらをもらってくる。
あの城だな。王がいるのは。
城壁のひとつも破壊したら許可とやらをくれるだろう」
「だめですよ。
そんなことしたら戦争になっちゃいます。
ジュエルボックスが王から追われるようになってしまいます」
「では、どうすればいいのだ」
「お客さまとしては入れないんですが、スタッフとしてならなんとかなるかもしれません」
「そうなのか」
「はい、我々設営のものと同じ服を着て、舞台袖にいてくれれば大丈夫だと思います」
「では、それでたのむ。
もちろん、鳥やじじい、スライムの分もな。
我だけでもいいのだが、やつらもうるさいのでな」
「わかりました。
それでは日程が決まったらお声掛けします」
「たのむ」
おっさんは少し頭を下げる。
なんか、嬉しそうだ。
これで、大丈夫だ。
名付けて毒をもって毒を制する。
なにかあったら、おっさんたちがあばれて無茶苦茶になるだろう。
そのうちに他の国にでも逃げればいい。
俺は、おっさんを見送りながら、にやりと笑うのだった。