プロローグ01
「じゃあ、今日の反省会」
ジュエルボックスリーダーの虹色美羽が場を取り仕切る。
ジュエルボックスとは、この小さな劇場をホームに活動する地下アイドルグループだった。
といっても単独でこの劇場を使っているのではなく、この劇場を中心に活動するアイドル5組のうちのひとつだ。
人気は下でもなく、上でもない。
ちょうど中間といったところだった。
世はアイドル戦国時代。
ジュエルボックスのようなアイドルは星の数ほどあった。
そして、その無数のアイドルから飛び出してメジャーになれるのは一握りだけだ。
最初はみんな自信満々でこの世界に入ってくる。
クラスでいちばんモテていたとか。
少しばかり歌や踊りがうまいとか。
その程度の自信はすぐに砕かれてしまう。
まわりを見れば、自分よりかわいい子、歌がうまい子、踊りのうまい子なんて五万といる。
そういう世界だった。
たとえば、このジュエルボックスのリーダー、オパールこと虹色美羽。
この子も昔天才子役と言われたことがあった。
ただ、それは幼女にしては天才というものであって、少女といわれる歳になれば、その競争についていけなかった。
もちろん、演技力にはすごいものがある。
ただ、それだけではこの世界生きていけないのだ。
「みんなわかってるとおもうけど、わたしたちやばいよ」
「……」
みんな黙るだけ。
そう、そんなことみんなわかっているのだ。
十代でジュエルボックスを結成したときは夢がいっぱいあった。
元天才子役、歌うまJK、全国学生ダンス選手権3位、ジュニアピアノコンクール入賞、学生空手選手権優勝。
他のグループと違うって思っていた。
ただ、かわいい子をあつめただけじゃない。
わたしたちは一本筋が通っていると思っていた。
ただ、自分たちが思うほど人気が出なかった。
人気というのは実力があれば得られるというものではない。
どちらかというと運に左右されるものなのだ。
確かに、売れるための方程式というのもある。
それを使うことすら、運に左右されるものだった。
「もう、みんな二十代半ば。
アイドルとしては旬をすぎてるの」
そう、アイドルはティーンズ中心。
10年の経験というのは、なんの糧にもならないのだ。
「売上も落ちてるし、新しいファンもついてないし。
このままじゃ。おわっちゃうよ」
彼女たちは売上という数字だけで評価される。
その売上で劇場の中でランキングをつけられる。
そして、上位のグループはより大きな劇場に行く。
下位のものは消えていくだけなのだ。