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第6話:ジュジュちゃんのパーフェクトまどうぐ教室

チルノのパーフェクトさんす〇教室



「………お嬢様」

「リナリナ、どうかした?」

「リナリアです、お嬢様。いえ、そうじゃなくて、その、それは一体………?」


 お屋敷の地下、私専用の実験室。

 ガシャンガシャンと騒々しい音を立てて動いていた新作を停止させて振り返り、リナリアが、いつになく顔色を悪くしていた。

 しかし、何を見てそんなに………


「ああ、これが気になるの?」

「ひっ」


 リナリアのほうへ近づいて、らしくない、かわいらしい悲鳴を上げるリナリア。

 なんでや。


「ジュジュ、そろそろご飯の時間だ。一度切り上げて………なんだ、それは?」

「あっ、パパ!!これは………えっと、乗り物、かな?」

「なるほど?」


 試作型移動補助装置4号機、『忌み蜘蛛の女王(アトラクナクア)

 8本の独立した動力を持つ主脚に4本の副脚を備えた、悪路踏破用の試作機だ。


 開発コンセプトは『拙者歩きたくないでござる』


 我ながら、なかなか会心の出来だったのだが………



「………なんというか、もうちょっと穏便な見た目にできなかったのか?せめて足を4つにするとか」

「パパ?」

「な、なんだ?」

「4脚とか2脚ってね、すっごく不安定なの。すーぐバランスないなって転びまくるし、とっさの対応も遅いし、出力も低いし。私だって、好き好んで、こんな蜘蛛みたいな見た目にしてるんじゃないんだよ?」

「そ、そうか」


 夢の4脚ガチミサイルアセンを作ろうとして挫折した無数の経験のフラッシュバックに襲われつつそう言って、パパンが若干引いたみたいな顔をした。


 いけない、危うくダークサイドに堕ちるとこだった。

 ソウルジェム真っ黒んなって魔女化する寸前だったのだ。

 夢に見るまで繰り返したトライ&エラーを頭から振り払って。


「機動性、走破性共に満足いくレベルには仕上がったんだけど………やっぱり、燃費が悪くてさ。今は、どうやったら燃費を抑えつつ出力を上げられるのか試行錯誤しているところ」

「そうか。………燃料は、やはり」

「コレだね」



 そう言って取り出したのは、長さ18センチ、横幅5センチの、複雑な魔方陣が刻まれた羊皮紙だった。


 呪々胎符(ジュジュバッテリー)


 この3年間における私の数々の発明品のうち、最高傑作の1つ。

 効果はいたってシンプル、私の魔力を貯蔵するというもの。


 どうやら私、総魔力量は尋常じゃなく多い(パパンとママンの約6倍!!)くせして、魔力の回復速度が平均よりだいぶ遅いらしく、一度枯渇してしまえば2日半ほど待たないと満タンにならない、難儀な体に生まれてしまったのだ。

 これでは、思う存分実験するなど夢のまた夢。

 せっかく手に入れたドリームランドをおあずけされて私のストレスがキョダイマックス。


 そこで私は考えた。



 私の魔力を貯蔵したらいいんじゃね?って。



 試作品が何故か爆発してアフロヘアになったり、魔力を全部吸われてダウンしたり、色々、ほんっっとうに色々あったけど、不断の努力と不屈の精神を以て、私は成し遂げたのだ。


 ………パパンに見せたら、絶対に誰にも見せるなってしつこく言われたけど。


 なんでか知らないけど、この世界、魔力のバッテリーを作るって発想がなかった、もしくは誰もできなかったみたいなのよね。

 そんな中、発想から実行に移して完成に漕ぎつけたジュジュちゃん、マジ天才。

 世界はいい加減私の足元に平伏して支配されるべきだと思うんだよね。


 ………はい、すんません、ちょーし乗りました。


 ぶっちゃけ、上手くいかなくてヤケクソで魔力をためておく魔法を作ってみたらうまくいっただけなんです。

 いや、やっぱ私の魔法ってスゲーわ。


 ………まぁ、魔力量の関係で1日に5個しか作れないんだけど。


「それで、パパ、なにかあったの?」

「………もう夕方だ、今日はここまでにしておきなさい」

「は~い。ちょっと待っててねってアバーーっ!?!?」

「ジュジュ!?」

「お嬢様!?」


 機能停止させたナクアから降りようとしてすっ転んでしまった。





















「ジュジュー?お皿、運んでくれるかしらー?」

「おっけー!」



 やほやほ皆様こんばんは!!


 超絶天才美幼女のジュジュちゃんだゾ☆彡


 ………はい、すみません。調子乗りました。


 しっかし、マジな話、いまだによくわからないのが、この転生という現象である。

 異世界転生モノの小説はよく読んでたけど、結局、この現象って何なんですかね?

 ブッディズムの輪廻転生とはまた別モンみたいだけど………まぁ、考えるだけ無駄か。


 私にできるだけの手を尽くして調べてみたけど、転生現象を可能にする魔法の存在には行き当らなかった。

 なんとなく、私と同じようなイレギュラー………いわゆる劣等髪のうちの誰かが魔術に覚醒した結果なんだろうとは思うけど、それだって、じゃあ、どんな魔法なら転生を可能にできるんだよとか、そもそもなんで私を選んだって疑問が残るし。


 だってほら、私、アレだよ?


 今でこそ超絶プリチーな美幼女だけど、転生前は一山いくらの一般人ぞ?


 そりゃ、それなりに器用だった自覚はあるけど、私より上の奴なんざいくらでも、それこそ掃いて捨てるほどいた。


 それよりはまだ、極微小な確率で発生するランダムイベントだって言われた方が納得いく。


 ………まぁ、それにしたって、なんで私を選んだって気分になるけどさ。


  そんな取り留めもない事をツラツラと思いつつ、魔力を高め。



「はこんでください、もくじんさん」


 ジェネリックピノキオみたいな見た目の木偶人形が、角ばった動きでシチュー皿をテーブルに並べていく。

 

 私オリジナルの魔術の1つ、繰糸傀儡(ダンシングボブ)を込めた、木製の自動人形だ。


 ………余談にはなるけど、姿勢制御装置の実現には、すごく、すごく苦労した。


 最終的には出力と動作速度を犠牲にし、更に起動に口頭での命令を必要とする縛りを設けることで、なんとか実用化に成功した。


 それまでに、いったいどれだけの屍を積み上げたことか………。


 あっ、ダメだ、普通にフラッシュバックが辛い。


 ………ちなみに、前に一度ゲッダンを躍らせようとしたらエラー吐いてぶっ壊れてしまった。


 どうやらゲッダンは異世界の魔術を以てしても世界の理に反しているらしい。


 ちくしょうめ。



「………まったく、お前の使う魔術は、やはり不思議だな。どういう術式なのかまるで把握できん」

「こ~ら。お食事の時間にまでお仕事の話を持ち込まないでくださいな」

「そうだよ、パパ。細かいことを気にするとハゲちゃうよ?」

「ぬっ」


 奇怪な呻き声とともにフリーズするパパンを尻目に、席に着く。


 昔は誰かに持ち上げてもらわなきゃ登れなかったこの椅子も、今ではご覧のとおり。

 ぬふふふふ、ジュジュちゃんは成長期なのだ。


「ねぇ、ジュジュ。今日は何を作ってたの?」

「んーと、前から作ってた多脚型の移動補助装置の改良、かな。今は、出力と反応速度を据え置きで燃費を向上させられないか試してるとこ。ほら、私の魔法って、やっぱり燃費がだいぶ悪いからさ」



 実際、魔法の開発を始めてからの至上命題の1つが、そこだったりする。


 私にとって、魔法とは、「魔力を対価に何でもできる不思議な技術」だ。


 私が何人いれば可能なのかはわからないが、理論上は、天変地異を起こすことだって可能だろう。


 だが、それをするには魔力が圧倒的に足りない。


 ゲーム風に言うなら、普通の火属性の魔術師が5ポイントの魔力で放つ火球を私が撃とうとすれば、15ポイントの魔力を要求される感じ。

 ようするに、私はぼったくられているのだ。


 ………冗談はさておき、この状況をどうにかしなきゃいけないのは事実。


 しかし、どうやって




「おい、ジュジュ。どうかしたのか?」

「あっ、ううん、なんでもないよ?」

「ならいいが、早く食ってしまえ。せっかくの晩飯が冷めたらもったいない」

「だね!いっただきま~す!!」



 ビーフシチューウマーー!!






















「ふひーー………ちかれたぴ~………」

「お疲れさまでした、お嬢様」



 リナリアにワシャワシャと頭を洗われつつ、頭皮をマッサージされる。


 「あうぁ~~………」とゾンビめいた呻き声が漏れ、頭からバシャッと熱めのお湯をぶっかけられる。


 プルプルと頭を振って、湯船に浸かろうとして、ターバンめいたやり方で、頭にバスタオルを巻かれる。

 

 いいとこのお嬢様なジュジュちゃんは、メイドさんにお風呂に入れてもらってるのだ。


 しかしまぁ………この、髪の手入れというやつには、なんというか、いまだになれないものがある。


 前世で髪を伸ばしたことがなかったから仕方ないといえば仕方ないのだが………うむむ。


 ………ちなみにというか、私の前世はれっきとした男なのだが、女体に接触しても特にナニカあったりはしなかった。


 精神が肉体に引きずられるのか、それとも別の理由か知らないが、少なくとも、リナリアと一緒にお風呂に入っていても、特にムラムラするような事はない。

 ………って、よくよく考えてみりゃ、()()()()()()も脳内で発生する化学反応の賜物であって、肉体の性別に依存するのはむしろ当たり前………なのか?

 専門じゃないからよくわからんが、どうやらTS系のアレコレは、我が身とは縁のない話らしい。


 ………少しだけ、前世の()とはもう違うんだと、思い知らされたような気分になってしまった。


 ちょっと熱めのお湯に、肩まで浸かって。



「………あれ?」


 白くてスベスベのリナリアの脇腹に、焼き鏝で抉ったような傷があった。

 傷口の様子からして、つい最近できたものだろう。

 というか、リナリアのお腹に傷あるの、見たことないし。


「リナリア、その傷、どうしたの?」

「これは………仕事中に、少しミスしただけです。なんでもありません」


 なかなかに痛々しい見た目のソレを指差して尋ね、リナリアが目を逸らした。


 ………ウソだな。


 私みてーな幼女でもわかるくらいに嘘くさいぞ、リナリアよ。

 ま、なんか理由があるんでしょ。

 聞いても素直に話してくれるとは思えないし。


 ため息をこらえて、爛れたようなその傷に、手をかざし。


「《癒す小天使(エンジェルグロウ)》」


 ────かつてのアメリカ、シャイローの戦いにて、幾名かの兵士たちの傷口が青く発光するという、奇妙な現象が起こった。

 フォトラブダス・ルミネセンスと呼ばれるベロ嚙みそうな名前の特殊な細菌が傷口で繁殖、有害な細菌を死滅させたことが原因で起こった、この発光現象は、兵士たちに神に守られている証であると思われた。

 その逸話を基にしたこの魔術は、腕やら指やらを生やすような劇的な効果こそないものの、傷口の化膿と壊死を防ぎ、緩やかに傷を癒す。



「お嬢様?何をやってってひゃうんっ!?ちょっ、くすぐったっ」

「あー、リナリア、あんま動かないで。治しにくいから」

「そんなご無体な!?わたしっ、本当にこういうのムリで」



 リナリアの悲鳴をシャットダウンして治療を続ける事、およそ数十秒。

 爛れて変色していた皮膚が正常な状態に戻ったのを確認し。



「よし、これでおわりっと。リナリア、治療終わったよ………って」

「はぁっ、はぁっ………ふーっ♡、ふーっ♡」



 のぼせたのか、火照った顔のリナリアが、焦点の合わない蕩けた眼で天井を見上げていた。


 …………このメイドっ、スケベすぎるッ!!


 いや、絵面が冗談抜きに事後にしか見えないというか、しっぽりずっぽりねっちょりヤルことヤったあとでしかないというか。

 すっごい美人なメイドさんがこんな事になってるのが、なんというか、犯罪的すぎる。

 ………というか、リナリアさんや、なんかキミ痙攣してるけど、ほんとにダイジョーブ?

 ………なるほど?腰が砕けて動けそうにないから、先に上がっててくれ、魔法で冷水出してクールダウンするからと。

 仮にも主家の令嬢を傍付きのメイドがほっぽり出すのってどうなのとか思わなくもないけど、故意の犯行じゃないとはいえ元凶の私がそれを言うわけにもいかない。


 一人でお風呂場から出て、良く体を拭いて、新開発した温風(ドライヤー)の魔法で髪を乾かす。


 ………微妙に聞こえてきた喘ぐような声は、ドライヤーで搔き消した。


 そりゃあ、私は紳士な幼女ですし?


 いくら主従とはいえ、プライベートは大事、古事記にもそう書いてある。


 さっさとパジャマを着込んでナイトキャップ被ってオフトゥンにダイブイン。


 照明を消して、目を閉じる。


 次第に重くなっていく意識に、身を委ね。




(………そういや、なんでリナリア、ケガしてたんだろ)



 リナリアの髪色は、綺麗な青色だ。


 自分の魔法でケガしたのかもとか思ったが、それはあり得ない。


 というか、瀟洒で優雅なパーフェクトメイドなリナリアが、そんなドジをするとも思えないし。


 ………思えば、リナリアの様子が、少しおかしかったような気がする。


 単純に話すほどの事でもないというよりは、()()()()()()()()()()()かのような。




「………もういっか、眠いし」



 考えても答えが出そうになかったので、幼女な私はおとなしく寝ることにした。


 (( ˘ω˘)スヤァ。





もう次回予告やめて延々と設定投下しようか悩む今日この頃。


ジュジュちゃんはリンクスで不死で狼でレイブンで死の鳥で火のないエアプです。

どうしようもないですね。


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