第5話:恐怖!白昼の変質者ラッシュ!!
お買い物回(買い物するとは言ってない)
「死ねぇっ、タルコフスキー!!」
「ぬるいっ!!」
「ギャアッ!?」
「《嵐壁》………あなた、あまり撒き散らさないでくださいね?せっかくの余所行きが汚れてしまったら大変でしょう?」
「むっ、それもそうだな。ではこうするとしようか」
「「「アバーーーッ!?!?」」」
………ええ、はい。
超絶天才美幼女魔法幼女恐竜天使戦士、ジュジュちゃんです。
パパンとママンと街に買い物に来たら、なんかめっちゃ襲われました。
なんで?
いや、まぁ、理由はなんとなくわかるんだけどさ。
「クソっ、流石は【ルビコン川の英雄】、前線を退いても実力は健在という事か………!」
「ねぇまってパパそんな2つ名で呼ばれてたの?」
「くらえっ、《火ノ球》!!」
「《炸裂する泡球》」
「っ!?やめっ、死にたくな────」
「あなた、以前より0.2秒ほど魔術の編纂が遅くなってますよ。前線を抜けてから腕が鈍りましたね」
「そういうリュドネラ、君は前線にいた頃より綺麗になった!!」
「まぁ嬉しい。今夜はご馳走にしましょうか」
「それならばっ、君の作るビーフストロガノフが食べたいぞ!!」
「わかりました。腕によりをかけて、作らせていただきますね」
「まって、みんないったん落ち着いて、私、話についていけてないの」
「お嬢様、いいですか、よく聞いてください」
「なによリナリナ!貴女もそっち側なの!?」
「リナリアです。お嬢様、旦那様と奥様は、政府軍の兵士として肩を並べて戦い、【バビロン平原の悪夢】として名を馳せた英雄です。この程度の雑な襲撃任務に放り込まれるような鉄砲玉風情では、勝利の女神が全力で爆笑しても傷1つつけるのが関の山かと」
「あっ、ふーん」
なるほど、そういう感じね。
………って納得できるか!!
なんで!?
なんでママンもツヨツヨなの!?
パパンが強いのはわかる。
すごくよくわかる。
この図体で弱いとか嘘だ。
でも、ママンまで強いってありゅ?
某天空の城の40秒で仕度させる女空賊ならともかく、ママン、おっとりウフフ系の美女ぞ?
おっぱいデカいし足長いしまつ毛も長いし、さぞモテたんだろうなというかむしろ今でもモテそうな感じの美女ぞ?(だいじなことなので2かい言いました)。
「ザコシっ、おいっ、ザコシ!………畜生ッ、ザコシがやられた!!」
「ハリー、ウッド、こうなりゃせめてあのガキを」
「お嬢様への狼藉はお控えください」
「けぺっ」
「あびゃっ」
「ウッド、ハリーっ!?」
「ショウ!!せめてお前だけでも逃げろっ、時間は稼いで」
「させると思ったかね?」
「アバーーっ!?」
仲間がサクサク殺られていくのを見て私にピストルの照準を定めた2人組が、額から水のナイフを生やして倒れ伏した。
………待って?今の下手人ってもしかしなくてもリナリアだったりする?
………ああ、なるほど、魔法で生成した超高圧の水の刃を投擲して仕留めたと。
ところで君、よくニコニコな動画サイトで爆発する紅い館で時間停止系メイドやってたりしてない?
え?そんな魔法は存在しない?
それもそうだなHAHAHA!!
「お恥ずかしながら、魔力量が生まれつき人より少ないもので。こういう小さな節約の積み重ねが、戦場での生き死にを分けるのです、お嬢様」
「ソーナノカー」
「お前らっ、ふざけやがって!!こうなりゃこの新型高性能爆弾でお前らごと自爆してやる!!」
「まぁ、恐ろしいわ、あなた」
「そうだな、リュドネラ。ところで君、その新型の爆弾とやらは、そこに転がっているソレの事かな?」
「なっ………おっ、俺の腕がぁっ!?」
「チェックメイトだ、君。あの世で悔い改め給え」
パパンが右腕を大きく薙ぎ払い、それに連動するように動いた水の巨槌が最後の1人の脳天に直撃、そのまま叩き潰して爆弾ごと起爆処理した。
………ちなみに、私の目がまともなら、爆弾を持ってた襲撃犯の腕を切り落としたのは、ママンが爆速で放ったカマイタチめいたサムシングだった。
………うん、少なくとも、私が反抗期に突入することだけはあり得ないわ。
一瞬で制圧されてドナドナドーナされてしまう。
「それで、あなた、これからどうします?」
「うむ。呼んでおいた衛兵がそろそろ来るはずだが………」
「タルコフスキー様、リュドネラ様!!自分は、この町の衛兵隊長を務めております、セクトールです。………それで、この者たちは………」
「レジスタンス共の下っ端だ。私たちを襲ってきたので全員始末した。後の処理は任せたぞ、私はこれから家族サービスをしなければならないのでな」
「それは………重要な任務ですな。承知いたしました、タルコフスキー様。後の事は我々にお任せください」
「ああ、頼んだ」
「それと、出来ればサインを貰えないでしょうか」
「ふむ………よかろう。君の短杖を見せ給え」
「はっ!!」
パパンが髭面のオッサンの杖になにやら刻印を刻むのを尻目に、あたりを見渡して。
「………うちの家族、すさまじいな」
ばらばらに刻まれたりひしゃげたり潰れたりした死体が転がる惨状から、そっと目を逸らした。
「ねぇ、パパ。結局、私が魔法使っちゃダメなアレコレとお買い物って、何か関係あったの?」
リナリアが御者さんやってくれてる帰りの馬車の中。
そう尋ねた私の頭を、大きくて分厚い掌が撫でた。
「いいか、ジュジュ。お前も知っている通り、この国は、何百年と内戦を続けてきた国だ。血で血を洗い、肉親が殺し合い、人体が無数に散らばる地獄のような戦場を、新しい死体と地獄で塗り重ねてきた国だ。………だからこそ、政府軍も、革命軍も、状況を打開する一手を心の底から欲している。それこそ、なりふり構わずあらゆる非道に手を染める程度にはな。お前のその魔法は、下手すれば、戦況を一変させる可能性すらある」
「………」
「その顔だと、うすうす勘づいてはいたみたいだな」
「………うん」
気づいていなかったといえば、ウソになるな。
私の魔法のヤバいところは、魔法を使う魔法を作れるという事だ。
クマのぬいぐるみに初級とはいえ風魔法を仕込めたのだ、ほかの魔法を仕込めない道理はないし、すでにある程度、運用の目途も立っている。
それこそ、マネキンか何かに攻撃力の高い火魔法を仕込めば、それだけで、命令に忠実で補給を必要とせず、完全に破壊される瞬間まで働き続ける不死の軍団が完成する。
そんなめんどくさいことしなくても、自爆用の魔法を仕込んだ人形を大量に生産すれば、それだけで、損害ゼロで敵軍に大打撃を与えられるだろう。
別に私が1つ1つ手作りしなくても、『魔法を使う人形を作る魔法』を付与した人形にやらせてしまえばいいし、その人形さえも魔法化してしまえば、怯む事も恐れる事もない人形の軍勢が無限に生産される事になる。
200年続いた反乱軍と政府軍の均衡は、一瞬で崩壊することだろう。
私はきっと、体のいい英雄として祭り上げられることになる。
だが。
「パパは、私にそうなってほしくないんだよね?」
「………当たり前だ。こんな肩書など、単なる大量殺人鬼の言い換えでしかない。お前に人を殺させる道具を作らすなど、もってのほかだ。殺しに手を染めるのは、我々大人だけでいい」
「………そっか」
「これで、わかってくれたな?………正直、お前が魔法を使えると知った時、喜びはしたが、お前を戦争に巻き込むわけには」
「じゃあ、家で実験するだけならいいよね?」
「………?」
私のセリフを聞いて、パパンとママンが宇宙ネコみたいな顔になった。
「いや、だからさ、私に何が出来て何が出来ないのかとか、どこまで出来るのかとか、色々気になるじゃん?家で外の人にバレないように実験する分には問題ないかなって」
「それは………まぁ、そうだが」
「それに、いざという時のための手札も欲しいしさ」
「………ねぇ、あなた?」
「………ああ、そうだな。わかった、屋敷の地下牢をいくつか潰して訓練場を作る。そこでだけなら、魔法を使っても構わない」
「ほんとっ!?」
「ああ。ただし、新しく作った魔法は必ずパパとママに教える事、少しでも危険だと感じた魔法は使わない事。この2つは守ってもらうぞ?」
「うん!!」
YESYESYESYESYES!!
やったッ!勝ったぞ!!
第三部ッ、完!!
我が世の春キチャーーーー!!!
フヒヒー、どの魔法から作っちゃおっかなーー。
やっぱりファンタジー定番のアイテムボックスとか!?
作っちゃう!?魔剣作っちゃう!?魔剣ダンテ再現してみちゃう!?
約束されし勝利の剣とか掲げちゃう!?
ああっでもいっそのことアイアンスーツとかそっち系やっちゃう!?
タイタンフォール!!って叫んじゃう!?
夢が広がるワクワクしちゃう!!
刮目せよ異世界人ども!!今日から私の時代が始ま。
「………ジュジュ、あまり無茶するようなら禁止だぞ」
「はっ!?」
またもや何も思いつかなかったので設定投下。
パパンとママンの戦闘能力は、大体四傑と同じくらいです。
具体的に言えば、タイマンなら五分五分、ラント君とかフェリ相手なら普通に勝てますが、フロム爺とかリーフ相手はだいぶ厳しいです。
とはいえ、それはあくまでタイマンの話。
2対1なら、リーフやノアマリー、ルクシア、クロ&スイ(タカアンドトシ風に)相手でもある程度時間を稼ぐくらいはできます。
伊達に肩を並べて戦い抜いてきたわけじゃないのです。