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第4話:悲報【魔法幼女、魔法使うなってよ】

パパン「次回お買い物といったな」

不審者「そ、そうだ大佐、たっ、助けてくれ!!」

パパン「アレは嘘だ」

不審者「うわーーーーっ!!」





「それで、ジュジュ。あれはいったいなんだ?何故、お前が魔法を使える?」

「えっと………だいぶ長くなるけど、全部話さなきゃダメ?」

「全部話してくれ」

「アッハイ」



 パパンに拉致られたお屋敷の書斎。

 大きな椅子にどっかりと腰かけたパパンが、血のように赤い瞳で私を見る。

 いつになく真剣なソレに気おされつつ、私も椅子によじ登………よじのぼ………よじ。



「危ないからやめなさい」

「うだーー」


 後ろから高い高いでもするみたいに持ち上げられて私オンtheリフト。

 やはり幼女のぷにぷに柔らかボディではパワーが足りない。

 せめて、せめて中学生くらいの身長があれば………!!


「で、あの魔法は何だ?」

「ごまかせなかったか~………」

「お前が年の割に賢いのも、手間がかからない子なのも認めるが、あまりパパを舐めないことだ」

「うぃ~………」



 机にべちょりと倒れ伏しつつ、全力で脳みそをぶん回す。

 問題は()()()()()()()だが、私に前世の記憶があることは言わないほうがいいだろう。

 劣等髪の私が魔法を使えるってだけでも異常事態なのに、「実は娘の中の人がいたでござる」とかカミングアウトしたところで、事態がいい方向に転がるとは思えない。


 ………いや、違うな。


 私は、怖いのだ。


 パパに、ママに、拒絶されることが。


 私の身に起きたこの転生という現象の本質など知る由もないが、それでも、この現象がイレギュラーなものだという事は私でもわかる。


 ………パパとママが、おそらくは私を拒絶しないことも、頭では、わかっている。


 だが、それでも、脳内にちらつく最悪の幻視が、私を縛り付ける。


 少なくとも、今はまだ、話せそうにない。


 僅かに乾いた唇を、舐めて湿らせて。



「う~ん………ほら、パパ、私って魔法が使えないじゃん。劣等髪だから」

「それは………そうだな。少なくとも、世間一般の常識としては、そうだ」

「じゃあ、それってなんでなのかなって思ってさ。他の髪色の人は使えるのに、劣等髪だけ魔法が使えないのっておかしくない?というか、そもそも魔法って何なのかとか、魔力って何なのかとか、なんで髪色で使える魔法が決まるのかとか、いろいろ気になって調べたんだ。まぁ、ろくなことはわからなかったんだけどね?」

「そうか………それで気づいたのか?」

「ううん。高いところの本を片付けようとして上手くいかなくって八つ当たりして気づいた」

「な、なるほど?」

「ほら、私ってば背が小さいじゃん?」

「そうだな」

「体も小さいから脚立が動かせないじゃん?」

「そうだな?」

「うまくいかないからだんだん腹立ってくるじゃん?」

「そうだな?」

「八つ当たりで動けっって言いながら叩いたら動くじゃん?」

「………?」


 困惑しつつも話を聞いてくれてたパパンが、宇宙ネコみたいな顔になった。

 まぁ、そりゃそうなるわな。


「………つまり、お前の魔法は、モノを動かす魔法ということか?」

「おしい、半分正解ってところだね」


 いまだに「信じられない」とでも言いたげな顔つきのパパンをよそに、机上から拝借した紙でシュババッと鶴を折って。



自殺妖精(スーサイドフェアリー)、暖炉に突っ込め」



 ふわりと放り投げた折り鶴があからさまに物理法則に反した動きで急加速して暖炉に突進、当然のように火に焼かれて燃えていく。

 ………前世の某最大手動画配信サイトで見た不良品のドローンを真似してみたんだけど、思ってた以上に絵面が酷い。

 ま、まぁ?元ネタでも子供ギャン泣きしてたし?むしろこれで完全体というか?

 ………見なかったことにしよう、うん。


 とりあえず。


「私自身、まだよくわかってないんだけど………私の魔法は、たぶん、()()()()()()()、なんだと思う。さっきぬいぐるみを動かした繰糸傀儡(ダンシングボブ)とか、今使った自殺妖精(スーサイドフェアリー)とか、ほかにも色々作ってみたの。………結構制限も多そうだし、あんまり強くはなさそうだけどさ」


 魔術的なプログラミング、とでも言えばいいのだろうか。

 条件を指定して既定の動作をするだけの魔術を作る魔法が、私の魔術だった。


 ………なんか、フルスピードで走るハゲみたいなこと言っちゃったな。


 まぁ、それは置いとくとして、だ。


「今はまだ実験途中だけど、うまくやれば魔法の道具とかも作れるんじゃないかな?今のところは、私以外の人が使える道具は作れなさそうだけど」

「そうなのか?」

「うん。よくわかんないけど、使える人を制限したほうが出力が上がるっぽくて。今の私の魔力じゃ、ぬいぐるみを躍らせるのが限界かな?」

「………ふむ」


 「魔法の道具も作れそう」という私のセリフを聞いて冷や汗を垂らしたパパンが、「今はまだ無理そう」というのを聞いて、安堵したような顔になった。

 よくわからないけど、()()()()するならここと見た。

 魔法を使って疲れたせいで少しだけ眠い頭を、最大限に回して。


「ねぇ、パパ。1つだけお願いがあるんだけど、いい?」

「なんだ?あまり無茶なことは聞けんぞ?」

「いやね?ちょっと魔法の練習を」

「却下だ」

「あるぇえ?」


 今の流れで却下されることってありゅ?


「いいか、ジュジュ。お前が魔法を使えるということ自体は喜ばしい事だし、それがお前を助けてくれるようなものならば、練度を上げておくのもいいだろう。だが、今はダメだ」

「………今は?」

「ああ。今は少し、時期が悪くてな。………ジュジュは、パパの仕事が何か知ってるか?」

「軍人さん………だよね?」

「そうだ」



 衝撃の事実!私のパパンはなんと軍人さんだったのだ!!


 ………いや、まぁ、パパのガタイで「民間人です通してください」とか言われても「ならぬならぬぞ」としか言えないだろうし、うん。

 ………一緒にお風呂に入った時、パパの背筋が鬼の貌みたいになってて死ぬほどビビったのは、軽い黒歴史ですらある。

 湯船の中だったから気づかれてないだけで、軽くちびりかけたし。


 あっ、もちろん我慢しましたとも。


 前世を含めればちょっと考えたくない精神年齢になってるんだ、そんな、子供みたいな恥ずかしい真似はできませんよ奥様。



「だが、パパの階級は知らないだろう?」

「ぬっ」


 流れ変わったな。


「アルスシール政府軍北方領域統括将軍。それがパパの肩書だ」


 ふむふむ。


「………つまり、偉い人って、こと?」

「………まぁ、そうなるな」


 コテンと首をかしげながら聞いて、苦笑いでそう返すパパ。

 ………こんな大きな屋敷に住んでるくらいだし、偉い人だとは思ってたけど、まさか、ここまでとは思わなかった。

 ………あれ?


「………パパの肩書と私が魔法を使っちゃダメなのって、何か関係あるの?」

「ああ。お前が未知の魔法を使うことが知られれば、おそらく、いや、ほぼ確実に、クソ無能の上層部どもがお前を戦争の道具にしようとするだろう。あるいは、クソボンボンどもの豚息子のご機嫌取りに使おうとするやもしれん。いずれにせよ、許容できることではない」

「うっげぇ」


 人間なんてどこの世界でも大差ないという事か。

 しっかし、子供を戦争に引きずり出すとか、いくらなんでもしないでしょ。

 ………しちゃうんだろうなぁ、きっと。

 パパの様子から察するに、自軍か敵軍か、あるいは両方が似たようなことやってんのを見たことがありそうだし。

 今の幼女幼女してる幼女な私に発情する変態ロリコンクソ野郎が政府軍の中枢にいるみたいだし、ひょっとしなくても、この国、割と終わってるのかもしれない。

 ………ま、そういう話なら仕方ない、か。


 心配させないように、1人でこっそり実験しよう。


「わかったよ、パパ。おとなしく諦め」

「だが、だからと言って、ジュジュはおとなしく諦めたりしないだろう?」

「おっ」


 流れ変わったな。


「というわけで、少し街へ買い物に行こう。ジュジュ、服を着替えてきなさい。パパはママを呼んでくるから」

「はーい!!」



 ………あれ?なんで今の流れでお買い物することになってんの?



何も思いつかなかったので設定投下。


転生前のジュジュちゃんは音楽を聴くのと読書が趣味でした。


ラノベから古典文学、クラシックからジャズ、アニソン、ヘビーメタルまで、特に好き嫌いはないタイプです。

なので、音楽を聴く手段が非常に乏しいこの世界に来て少しだけ絶望してます。

不憫可愛いですね。

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