第3話:魔法幼女は唐突に
短くたって構わない(構う)
だって疲れちゃってェ………
これくらいだとキリもよくてェ………
「パパ!ママ!早くこっちきてってば!!」
「ちょっと、ジュジュ、そんなにはしゃいでどうしたの?」
「見せたいものがあるという話だったが………そんなに急ぐものなのか?」
「まだナイショ!!」
戸惑ったように顔を見合わせる2人の手を引っ張って、廊下を急ぐ。
私が魔法を使えることに気づいてから1週間、一応の実績を叩き出した私は、秘密の特訓の成果を見せつけるべくお屋敷の庭へ走っていた。
金木製の大きな木が植えられた裏庭に出て、リナリアともう1人────門番のロナルドが、ぬいぐるみと稽古用の藁人形を並べていた。
それを見て取ったパパンが、なんだか頭が痛そうな顔をして。
「………リナリア、ロナルド。これはどういうことだ?」
「ああ、旦那様。どういうこともこういうことも、お嬢様に用意するように仰せつかったんでさ」
「………どういうことだ?」
「まぁ見ててって!!リナリア、ぬいぐるみはこっちに積んでおいてね?」
「承知いたしました、お嬢様」
山と積まれたぬいぐるみの前に仁王立ちして、用意しておいたメガホンを取り出し。
「《繰糸傀儡》、《悪戯妖精》!!」
放った言葉が実を結び、直後、生命を持たぬぬいぐるみたちが一斉に動き出す。
ヨタヨタとした足取りで無秩序に歩き出そうとしたそれを相手に、大きく息を吸い込み。
「《部隊編成》!一番部隊から九番部隊まで整列!!」
ビシィッ!!と擬音が付きそうな勢いで整列するテディベアたち。
周りがわずかにどよめくのを無視して、手を掲げる。
結構な勢いで魔力が吸い上げられるのを感じつつ、ぺったんこ通り越して無い胸を全力で張って。
「一番から三番部隊は右翼に展開!四番部隊、五番部隊は樹上にて潜伏!六番部隊は正面にて防御陣形!七,八,九番部隊は左翼にて展開!!」
私の号令を受けて、血も肉も骨格もない綿と布の熊たちがてきぱきと陣形を作っていく。
物言わぬおもちゃの軍団が形成した原始的なソレ────包囲陣形に、パパンが、眉を顰め。
「ぜんたーい、かまえ!うてーーい!!」
ポン、ポポン!!と間抜けな音を立てて風の砲弾が弾道を描き、並べてあった鎧に着弾して爆ぜる。
お屋敷の本を漁って見つけた風属性の初級魔術、《風弾》。
圧縮した空気の球を飛ばすだけのチャチな魔術だけど、今の私が組み込める魔術の限界はコレだった。
はっきり言って、そこらの一般的村人Aの方がよっぽど強いと思う。
………ま、まぁ?
これはあくまでも実験だし?
そもそも私、まだ5歳児だし?
やっぱり、子供に求めすぎるのはよくないと思うんだ、私。
「というかうるさいな!?うちかたやめーっ、はいっ、やめーっ!!」
いまだにポヒュポヒュやってたぬいぐるみに停止命令を出して、樹上で景気よくやってた数体が力なく地面へ落ちる。
むぅ………やっぱりというか、内臓魔力量に問題があるな。
動かすだけならともかく、魔術を使わせれば一瞬で魔力が尽きる。
もっと効率よく運用していくには、バッテリーかそれに類するものを開発する必要が。
「………ジュジュ、今のは、なんだ?」
「私のオリジナル魔法だよ。どう?結構すごいでしょ?」
なんだかやけに冷たい声で訊いてきたパパンにそう返して、そこで初めて、周りが静まり返っていることに気づいた。
四方から浴びせられる、異物でも見るような視線。
生まれ変わってから一度も感じたことのないそれに、思わず怯み。
「………リナリア、ロナルド、現時点を以て、貴様らに第一級禁口令を発令する。禁を破れば処する。心しておくことだ」
「承知いたしました、旦那様」
「ンな命令出されなくても、誰も言いやしませんよ」
「そうか。………ジュジュ、話がある。ついてきなさい」
「えっ、でもっ、私っ」
「ついてきなさい」
「………はい」
有無を言わせぬ口調で命じられて、パパの後ろを黙ってついていく。
見慣れたはずの大きな背中が、いつもと少し違って見えた。
次回予告
なんやかんやあって街にお買い物に行くことになったジュジュちゃん!!
ウキウキ☆ショッピング中の幼女を背後から付け狙う不審な影が1つ!
対するはブチギレ発狂三秒前のパパ&ママ(タカアンドトシ風に)とバトルメイドさんが1人!!
街の明日はどっちだ(投げやり)
次回「ぶっちぎりバトルソルジャーズ!!トナリ=マチ大炎上!!」
ぜってぇ見てくれよな!!