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第17話:燃え尽きろ悪夢の森!熱戦・烈戦・超激戦!!

パソコンがテクノブレイクしたりその他諸々で遅れましたが私は元気です。スマホ打ちにくいんじゃい!!!れ!!





しとしとと、頭の中で雨が降る。


ゆっくりと、滴る様に、雨が降る。


私の中で、雨が降る。


あの日と同じ雨が降る。


黒く濁った、雨が降る。






内臓、銃声、硝煙、雨、悲鳴、血飛沫、苦痛。



赦しも慈悲も救いも祈りも介在し得ない地獄の釜の底の底で、腕を振り上げ、振り下ろし、執拗に肉を引き裂き続ける。

粘ついて腐臭を放つ死血に視界を半ば塞がれたまま刃を振り下ろそうとして、太く筋肉質な腕に手首を握り潰される。

思わず刃を取り落とし、


「………ぱ、ぱ?」


そこでようやく、私が刺突していたソレがパパだと気づいた。


「っ、待って、パパ!!私、そんなつもりじゃ」



 咄嗟にパパを抱きかかえて、どちゃ、と嫌な音とともにパパの頭が血溜まりに落っこちた。

 目玉が眼窩から零れ落ち、ぽっかりと空いた空洞から蛆虫が這い出る。



「〜〜〜〜っ!?!?」

「あら、ジュジュ。そんなに焦ってどうしたの?」

「ママ!?大変なの、パパが」



 ずちゅ、と水っぽい音と、私の腹から飛び出した銃剣の切っ先。

 立っていられなくなって倒れ込み、伸ばした掌を、昆虫標本の脚を磔にするように研ぎ澄まされた刃が貫通する。

 神経をヤスリで削り取られるような激痛に、視界がチカチカ明滅し、


「やほやほ、エイジにぃ。おひさ〜」


 所々朱に染まった真っ白い病人服の裾が、ゆらり、と幽霊のように揺れた。


 真っ黒い、冷たい目が、突き刺すように俺を見る。


 あの日と同じ、黒い、綺麗な眼。



「………し、おん?」

「うん」

「シオン?」

「うん」

「シオン!?」

「さっきからずっとそうだって言ってるじゃ」

「シオン!!」

「うわっ!?」

「ごめっ、ごめんっ、ごめんなさいっ、しおん!わたっ、わたしっ、守れなくて、なにもっ、できなくて、ずっと、ずっと、謝りまりたくって!!」

「うんうん、そうだね。エイジにぃは頑張ってるよ」



 酷く、残酷なくらい優しい声と、私の頭を撫でる掌の感触。

 白い手が、私をそっと抱き、




「で、それでどうなるの?」



 喉奥から込み上げてくる鉄錆臭い不快な味と、口腔に充満する熱い体液。


「エイジにぃのせいで私もアヤメも死んだのに、謝ってどうにかなると思ったの?」


 ぐちゅぐちゅと水音を立てて、シオンの綺麗な指先が私の胎をまさぐっていた。


「無関係な子供を拾って、私たちの名前をつけて、あの2人も殺すんでしょ?」


 がふ、と咳き込むような音がして、どこか他人事のような非現実感と共に、どす黒く凝固した血液が私の口から溢れ出す。


「ねぇ、何かに言い訳しなくちゃまともに生きる事もできない、出来損ないの人擬きさん?」


 ずるりと腸を引き抜かれ、まるで新婚初夜の花嫁か何かのように優しい手つきでシオンが私を押し倒し、クルリと喉首に巻き付けられたハラワタが、万力の握力を以て私の頸動脈を締め付ける。


「それとも、今もこうやって殺されて、気持ちよくなってるのかな?」


 意識が急速に狭窄し、ギリギリと、私の生命を終わらせる音が脳内に木霊する。


 眼球が裏返り、顔が鬱血し、舌が突き出て、私の意に反して、原始的な反射に駆られた肉体が無様なダンスを踊り出す。

 私自身のハラワタに爪を立て、ぬるりとした熱と不快感。



 ─────まぁ、ソーセージのケージングに使うくらいだし、そりゃ、頑丈だよな。



 そんな馬鹿な思考を最後に、私の意識は消失した。













「………夢、か」



 じっとりとした、不快な目覚めだった。

 体を起こし、ベッドのシーツとパジャマが汗でぐしょ濡れになっていた。

 いつの間に蹴落としたのか、床に落ちていた毛布を拾い上げ、



「へくちっ」



 体が、酷く寒い。


 これだけ汗を掻いたのだから当然だろうが、それにしてもひどく寒い。

 あと頭が重い。

 溜息を、飲み下して、


「………とりあえず、洗濯してシャワー浴びよ」


 ベッドからシーツを引っぺがす作業に移った。











「………ふぅ」


 ざぁざぁと、水の流れる音。


 体を洗い流し、少し湯を溜め過ぎた風呂に体を沈める。

 アルキメデスが原理を発見した時同様に、湯船の縁から湯が溢れるのを目線で追いかけ、


「………これで、何回目だっけ」


 この数週間、なんども同じような夢を見たせいで、内臓が引き攣るような幻痛にもいい加減飽いてきた。


 体の芯に、ゆっくりと熱が染み入っていく感覚と、倦怠感。

 確かに思考が鈍化していくのに、頭の一部だけが、極端に冴え渡っていく。


「………もう上がるか」


 お風呂から出て、体を拭いて、服を着て、時計を見たら午前3時だった。

 ………正直、起きるには大分早いだろうが、今から眠れるとも思えない。


「………しゃーないか」


 少し肌寒い夜の冷気を無視して、稽古場へ向かった。











 無心にて、標的を撃つ。


 拳を固め、一歩を踏みこみ、全身の旋転と共に拳を放つ。

 幾百、幾千、幾万と繰り返した動作を、同じように、放ち続ける。

 気に入らない箇所があれば修正し、打突する。

 機械の両足で床を踏みしめ、拳を打つ。

 脇腹の痛みを噛み潰し、肺腑に呼気を取り込み、



「お嬢様。ストップです」


 背後から、険を帯びた声。

 握りしめた拳を降ろして振り向き、稽古場の入り口に、困ったような顔のリナが立っていた。


「おはよう、リナ。どうかしたの?」

「どうもこうもありません。手、血が出てますよ」


 そう言われて手を見て初めて、いつの間にか手の皮が破れていた事に気づいた。

 どうりで拳が滑ったわけだ。


「あぁ、うん、コレはコレであってるから」

「………そういう問題じゃない、というのはわかってますよね」

「まぁね」

「………私としては、あまり、そういう事はしないでいただきたいのですが」

「最近………というか、生まれ変わってからあまり鍛錬できなかったからね。早いとこ体を作り直さないといけないから」


 前世でもそこまで身長が高いわけではなかったが、幼女になったせいで筋力やら体格やらがショボくなったのは否めない。

 覚えた技術や知識が無に帰したわけではないが、切れる手札が多いに越したことはない。


「鞭術とかプロレスとかはともかく、剣と槍も出来るだけ早く使えるようになりたいし、銃火器も充実させなきゃだし、しばらくは忙しくなりそうなんだよね」

「………お嬢様、前世で軍人でもやってたんですか」

「んー、一般市民?」

「嘘ですよね」

「マジマジ。そりゃ、戦争がない世界だったわけじゃないけど、従軍経験はないよ。というか、あの世界じゃ剣と槍は過去の遺産だったし」

「という事は、魔法と銃の撃ち合いですか」

「ううん、あの世界、魔法がなかった」

「………マジですか?」

「マジ。アルスシールよりもっと発達した兵器が戦争の主力だったかな。私も戦争についてはそこまで詳しくないけど」


 拳の血を拭い、軽く消毒して包帯を巻く。

 傷に沁みるアルコールの香りを、鼻腔に吸い込み、


「そっちに関しては後で話すとして、リナ、私を呼びに来たんじゃないの?」

「あぁ、すっかり忘れてました。朝ごはんが出来たので呼びに来たんです」

「ん、おっけー。片付けだけしてから行くね」

「承知いたしました、お嬢様」


 ペコリと頭を下げたリナが部屋を出ていくのを見送って、


「………んじゃ、掃除しますか」


 ズタズタに殴り潰した巨大蟹の甲羅を前に、稽古着の袖を捲り上げた。












「ふ~ん♪ふんふふ~ん♪ふんふふんふ~ん♪ふんふふんふんふん♪」


 鼻歌混じり、ビクビク動く六つ目のイノシシの脳天に斧を叩き込んで沈黙させ、鈍く重い鉄刃にこびりついた血と脂を振り払う。

 ………『狩り』に来る前に存分に研いではあったが、やはり鈍るのが速いな。

 懐から解体用の大型ナイフを取り出して、




 鼻を衝く、腐敗したような悪臭。


 咄嗟にその場から飛び退き、直後、私の眼前を黒いものが通り過ぎた。

 それなりに硬かったはずのイノシシを一撃で粉微塵に粉砕し、攻撃の余波が銀世界を大きく抉り取る。


 雪煙の中から現れたのは、見上げるような巨体と四腕、類人猿の特徴が色濃く出た猿面から生えた、肉食動物のソレを思わせる犬歯を持つ、どす黒い大猿だった。

 ………見逃す気は、なさそうだな。


 殺気丸出しで牙を剥く獣を前に、腰に佩いていた太刀を抜き放った。












「シャアァッ!!!」


 大ぶりの拳を前に出て躱し、すれ違いざまに脇腹を斬りつける。


 分厚い体毛と皮下脂肪を引き切り、しかし致命傷には程遠い。


 追撃の裏拳を避け、顔面をぶち抜くつもりで突きを放とうとして、左の貫手に面の皮を剥がされかけて慌てて退避。

 副腕の機銃を掃射して、相手の体表が弾け不快気な唸り声が響く。

 膠着を嫌ったか、弧を描くように動きながらじりじりと距離を詰めてくる猿に、刃を構え、


「ガァアァアアアアッ!!!」

「叫んでんじゃねぇぞッ、このサル野郎が!!!」


 大口開けて飛び掛かってきたところに手榴弾を放り込み、くぐもった音とともに奴の顔面が盛大に爆ぜる。

 顔面の穴という穴からプスプスと黒煙を噴き上げて倒れ伏す馬鹿猿の首を引っ掴んで、そのまま刀で斬り落とした。

 ………この森の魔獣どもはやけに頑丈だが、昆虫系のクソどもはともかく、哺乳類タイプの連中は首を切断すれば大抵死んでくれる。

 とはいえ安心はできないので《怪力の巨神(カブラガン)》で強化された脚力で、ケツ丸出しでくたばってたバカを蹴ってひっくり返し、心臓を刺し貫く。

 念には念を入れて腹を裂いて内臓を引き摺りだしてゲームセット。

 刀にべっとりとこびり付いた血を拭い、


「しかし………見た事ない奴だな、コイツ」


 刈り取った首を開き歯を確認し、ついでに内臓も見ておく。

 ………擦り減ったのかどうかよくわからないが、臼歯はそこまで発達しておらず、むしろ肉を噛み千切る事を重視したような構造と、たいして発達していない腸の構造からして、肉食、あるいは極めて肉食に近い雑食の生物だろう。

 分類としては類人猿で間違いないだろうが、地球にいた同族と異なり腕が4本も生えている。

 どういう進化をしたらこうなるのか興味深くはあるが、問題は


「………多分いるよな、群れ」


 いや、これだけデカい奴でもそうなのかは知らんが、ゴリラ然りオラウータン然り、大抵の類人猿は群れを作るものだ。

 どれほどの規模かは知らないが、群れがいてもおかしくは





 ゴッ、と鈍い音が側頭部で弾けた。


 膝が砕け、全身が硬直して、そのまま地面に倒れこむ。

 殴打された拍子に義眼がすっぽ抜けたのか、妙な空白感に胃液がせりあがるのを感じつつ、刀を構え、


「こん、ゴミクズが!!!」


 顔面狙いの引っかきを躱しざま、伸びきった関節に刃を振るい、切り飛ばす。

 血飛沫の中、大ぶりの一撃をかろうじて防ぎ、太刀が半ばから圧し折れた。

 ………わかっちゃいたが、流石に強度が足りんか。

 牙を剥きだしにして飛び掛かってくる大猿を前に、懐から、目当ての物を引き摺り出し、


「【雷斧】!!」


 死血色の稲妻が、相手の腹を大きく抉って胴体を半ばから引き千切った。

 【唾吐き娘(スピットファイア)】………純粋な魔力を直接投射する攻撃魔術の発展型、過剰に圧縮した魔力を幾条もの斬撃線として投射する【雷斧】と、使い捨ての呪符として携帯可能にした【雷符】。

  射程距離にやや難はあるが、威力、攻撃範囲共に申し分なし。


 消費魔力が重すぎるせいで1日に3つしか作れないが………まぁ、そこらは今後の課題か。


 足元に転がってた義眼を拾って、右の眼窩に嵌め直す。

 大きく背伸びをして、


「………さてと、どうやって持って帰ったもんかねぇ」


 目の前でくたばったままの、推定数百キロは下らない大猿をどうやって持って帰るのかという特大級の厄介事を力尽くで解決すべく、《怪力の巨神(カブラガン)》を出力マックスで発動した。















「………あの、お嬢様、マジで食べるんですか?」

「うん」

「おにく?」

「おにくだ」

「あっ、こら、これ食べちゃダメな奴だからね?」

「けちんぼ」

「ぶーぶー」



 夕食後の食卓。

 私の眼前、皿に乗ったサイコロステーキを食べようとした妹たちを制止する。

 ………勘違いしないで欲しいが、別に、意地悪だとかキュートアグレッションとかではない。

 なにせ今から行われるのは、



「お嬢様。正直、無理して食べる必要は薄いかと」

「そう?」

「というか、アレをよく食べる気になれますね。相手サルですよ?」



 獅子猿─────私が今日ぶっ殺した四本腕の大猿─────が食べれるかどうかを試す、純然たる毒見である。


 血抜きをし、皮を剥ぎ、内臓系は怖すぎるのでスルーして、比較的臭みが少なそうな肩肉を叩き、筋を切り、ニンニクその他香辛料をしこたま塗り込んで、こんがりウェルダンになるまでガリッガリに焼き上げた一品。

 少なくとも、食中毒になる可能性は限りなく低いはずだ。


「そうは言うけどね、リナ。私の出身国じゃともかく、前世の地球じゃ、猿を食卓に供する国って結構あったんだよ?」

「………まじですか?」

「マジマジ。そりゃ、家畜にするにはまるで向かないから養殖はないだろうけど、野生の猿をとっ捕まえて食べる国はそれなりにあったはずだし」

「………世界って広いんですね」

「ま、私は食べた事なかったけどね」

「ないんですか」

「むしろ、問題は味よりも毒があるか否かだね」


 一応、毒検知用の魔法道具は作ってあるし、今のところ毒を喰らったことはない。

 毒を喰らったことはないが、


「今までたまたま毒持ちに当たらなかっただけの可能性もあるからね」

「………そこまで行くと、気にし過ぎのような気もしますが」

「こんなもんだよ、未知の食材との出会いなんて。………あと、この森の生態系信用できないし」


 陸上を猛烈な速度でダッシュするシャチホコとかクソデカバードとか眼がたくさんあるイノシシとか腕が四本の大猿とかが出てきている以上、私は既にこの森の生態系を信じられない。

 腕が四本の大猿が肉に毒を持っていても、何もおかしくないのだから。


「ま、とりあえずはほんの少しだけ齧ってダメそうなら吐き出すよ。問題なさそうなら明日まで様子見して、そこからだね」

「えぇ………やめといたほうがいいですって」

「リナリナ君、挑戦無しに発展は存在し得ないのだよ」

「リナリアです、お嬢様」


 見事なジト目から目を逸らし、小ぶりな肉片にフォークを突き刺す。

 匂いは………特になし。

 こんがり焼いたニンニクのいい匂いがする。


 ふと視線を感じて、シオンとアヤメがすっごいキラキラした目でこっちを見ていた。

 ………罪悪感がチクチクとハートを刺してくるが、二人の安全のためなので我慢してもらおう。


 意を決して、ほんの少しの肉片を噛み千切り、舌先にのs







「~~~~~~~~っっ!?!??!?!?!?!?」

「お嬢様!?」




 なnkOえあsdrftykbn


       ふqwんfgqmw;えいぉf9


  3ふえlfbw 

         死     えうgふぇhbf


gdqwいhdjwn  

            苦  

               あうぇrctvbn


     gdw、ckxgsじゃhdg




「ちょっ、だから食べない方がいいって言ったじゃないですか!!!!シオン、アヤメ、ナイフ取ってきてくださ」



「くっっ、せぇええぇぇええぇっっ…………っ!!」


「………は?」



 なんっこれ、なんっ、なんだこれ!?


 目と鼻の奥が、いた



「おぇええぇぇえええぇぇ………」

「………お嬢様、大丈夫、じゃなさそうですね?」

「だいじょばにゃひ」



 毒があるとかないとかそういう次元の問題じゃなく、シンプルに臭すぎて食えない。


 公衆トイレの便座に付着した正体不明の物質Xみたいな臭いがする。


 臭み抜きとか下処理とかでどうこうなるモノではない気がする。



「ダメだ、これダメ。ブタも食わんぞこんなもん」

「………そんなマズイんですか」

「これ食うか餓死するか選べって言われたら人としての尊厳の為に自殺するレベル」

「そこまでですか………」


 というかあの猿、ひょっとしなくても不味すぎて天敵がいないとかそんな感じなのか?

 たかが猿程度がシャチホコとかに勝てるとも思えないし、エサとして魅力がなさ過ぎて襲われない可能性は普通にある気がする。

 ………ま、アレだな。



「拾ったものを食べちゃいけませんって事だな」

「ニ゜ッ」

「ミ゜ッ」

「うん?」


 変な悲鳴?が聞こえて横を見ると、シオンとアヤメが椅子から転げ落ちていた。

 机の上の皿を見ると、サイコロステーキが幾らか減っていた。


 ははーん、さてはアレだな?お肉食べちゃったな?


「ちょっ!?2人とも何やってんの!?ペッしなさい!!ペッ!ほら、ばっちいから!!」

「………ひょっとして、お嬢様のリアクションを見て味が気になったのでは?」

「えぇ………そんな事ってある?」

「あるというか、お嬢様、だいぶ前にお庭の野草を食べて悶絶してましたし、子供とはそういうものなのでは?」

「えっ?なにそれ覚えてない」

「お嬢様が3歳の頃の話ですので」

「あー、そりゃ覚えてないか」

「うに〜…………」

「にゅにゅにゅ」

「………とりあえず、2人ともペッして、リナはジュース持ってきて」

「かしこまりました、お嬢様」


 口を抑えてウネウネする2人を抱え起こして、リナに口直しのジュースを持ってきてもらった。














 血の匂いがする。


 眼前には、物言わぬ同胞の屍。


 『彼』の鋭敏な嗅覚は、致命傷と思わしき、抉ったような奇妙な傷跡に、『力』の残滓を感じ取っていた。



 目の前の同胞は、『彼』の何番目かのまだ若い息子であった。


 数秒の沈黙の後、『彼』は右腕を振り、配下に命じて直ぐ側の手頃な巨木の根元に穴を掘らせ始めた。

 酷く軽い身体を抱きかかえ、黒々とした穴の底に横たえ、その上から土を被せ始める。

 『彼』の父も、その父も、そのまた父も、ずっとこうやって来た。

 こうすれば、同胞はいずれ森に還り、恵みとなると、『彼等』は経験則で知っていた。


 小柄な『メス』───小ハレムの一員だったか───が盛った土の上に花を添えるのを尻目に、『彼』はその六肢を駆使して、同胞の墓標に登り上がった。


 『家族』が好奇の視線を向ける中、『彼』は、夜半の森の湿った青臭い大気を存分に肺腑に取り込み、そして()()()


 咆哮がビリビリと大気を震わせ、はるか遠くまで伝播していく。


 『彼』─────ジュジュが獅子猿と名付けた魔物の群れのボス、『家族』の中で【月を見る者(ムーンウォッチャー)】と呼ばれる、純白の毛並みの老猿は、静かに激昂していた。




次回予告

私ジュジュ、いつの間にかなんか物騒なモンキーに目をつけられちゃったの!!

悪夢の魔物は相変わらずタフだし、見たことない魔物は続々出てくるしでもう大変!!

生き残るためにも、まずは強くならなくっちゃいけないんだけど………その鍵は、まさかのアレで!?


次回

トキメキ♡魔法幼女サバイバル


第42話「恋はルール無用!放て!!邪王炎殺黒龍波!!」

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