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第15話:ポツンと一軒家というか森の中の洋館とかロクでもない厄ネタだよねって話


遅れてしまって申し訳ない。実家に帰省していたり大学始まった理で忙しかったんです許しておにーさん許して。





「ガドガドガドガドガドガドガドガドガドガドガドガドガドガドガドガドガドガドガドガドガドガドガドガドガドガドガドガドガドガドガドガドガドガドガドガドガドガドガドガドガドガドガドガドガドガドガドガドガドガドガドガドガドガドガドガドガドガドガドガドガドガドガドガドガドガドガドガドガドガドガドガドガドガドガドガドガドガドガドガドガドガドガドガド!!!!」




 第一次世界大戦時、いくつもの兵器が、戦術が、この世に産み落とされた。


 戦車、毒ガス、塹壕、有刺鉄線、etc.


 その中で、あえて最悪の発明を選べと言われれば、私はこう答える。


 それは、即ち────



「レッツ、ロケンローーーーゥウゥゥルルッッ!!!」



 機関銃(マシンガン)であると。


 

 威力!!


 射程!!


 攻撃速度!!


 そしてッ、何よりもッッ!!!



「こぉおのぉぉおおッ、圧倒的ッ!!連射力よォオオォォッッ!!!」



 迫りくるクソクリーチャーどもを粉砕玉砕大喝采!!!


 並みの軍隊なら一瞬で飲み込まれるようなバケモノ共を圧倒的暴力で蹴散らす、このッ、快楽ッ!!



「死ねッ、死ねッ、死ねぇッ!!どうだっ、コレが力だッ!これが暴力だッ!!!平伏せっ、逃げ惑えっ、絶望しろッ!!それでショウは終わりだッッ!!!」



 逃げようとした一団にロケラン叩っ込んで木っ端みじんに爆殺し、ついでに頭上を薙ぎ払って、飛び掛かってきたゴリラを射殺。

 モンキーが私に勝とうなど1000年早いのだ。


「ちょっと、お嬢様!いったん落ち着いて」

「え?なんだって?」

「マジですか!?」




 私の背中に隠れたまま何か叫ぶリナを放って掃討を続ける。



 増援が現れなくなったのは、それから2時間後だった。






















「ふい~………スッキリしたじぇい~………」

「………お嬢様。激戦地でも見ないような死体の山を積み上げた後に言うべきセリフじゃあないかと」

「ん?リナは気持ち良くなかった?」

「………それは」

「リナ、ちょっと楽しそうだったよ?」

「………まぁ、否定は致しませんが」


 若干顔を赤らめていうリナをよそに、ぽふんと機械人形に腰かけ。



「【武器頭(アイアンヘッズ)シリーズ】………まだ改良点は沢山あるけど、今はこれくらいでいいでしょ」


 シンプルな構造の四つ足に、機関銃の頭と両腕を備えた、自動人形(オートマータ)

 機動性と耐久性にやや難はあるが、自動攻撃可能な人形兵は、やはり強い。


 雑に手数を出せることのありがたさよ。


 あとやっぱり全自動式最高。

 かつての洗濯機がそうであったように、人の介入する余地を削り、人力による労働を減らせば、その分だけ文明の発展に繋がるのだ。

 ………まぁ、私の作ったものはほぼ全て、どこかの誰かがすでに作ったもののコピーでしかないのだが。

 天才でもなければ秀才でもない私の限界など、所詮この程度という事なのだろう。

 まったく………自分の非才が呪わしい。


 若干暗い気持ちになったのを、飲み込んで。


「じゃ、そろそろ帰ろっか、リナ」

「はい。お嬢様」



















「はぐはぐはぐはぐっ」

「あちゅっ」

「二人とも、ゆっくり食べてね。誰も取ったりしないから」

「おかわり!!」

「ん、もう一杯」

「話聞いてた?」

「おかわり!」

「リナは自分でやれるでしょ」

「(´・ω・`)」


 とっぷりと日も暮れた森の洋館。


 シチューをがっつくシオンとアヤメにお代わりをよそってやり、硬く焼き締めたパンをシチューに浸して齧る。

 ………味は悪くないが、野菜が足りない。

 なんとかして自給自足の手段を探らなければ。


 猛烈な勢いで食事を掻きこむ2人を眺め、


(………問題が、栄養失調だけなら良かったんだがな)


 二人をお風呂に入れた時に、上段抜きで肋骨が洗濯板みたいになってたのを見て心臓がきゅってなったが、問題はそれだけじゃない。

 二人の下腹部、ちょうど子宮のあたりに刻まれていた、赤の紋章。


 獅子の顔に蛇の体を持つシンボルで描かれる、ヤルダバオート………不完全な悪神(デミウルゴス)の紋章。

 大昔に絶滅したキリスト教の異端、グノーシス派が用いたはずのソレが、何故この異世界にあるのか知らないが、2人の髪色から判断しても、何かしらの厄ネタであることは間違いないだろう。


 ………もっとも、それは2人を見捨てる理由にはなりえないのだが。


「おねーちゃん、おかわり」

「ジュジュねぇ、お代わりちょうだい」

「は~い。それと、私の事はお兄ちゃんと呼ぶように!!」

「おっけー、おねーちゃん」

「ジュジュねぇ、リナねぇがパン詰まらせた」

「何やってんのリナ!?」













「まったく………あの2人元気すぎでしょ。可愛いからいいけど」

「まぁ、アレくらいの歳の子供は、手間がかからない方がおかしいくらいですから。お嬢様は例外でしたが」


 フルスロットルで大暴れするチビッ子×2を寝かせつけて、リビングでホットミルクを飲む。

 しれっと寄り添ってきたリナの胸に後頭部を預け、


「前世の記憶分入れたら30歳超えるからね、私。………肉体に精神が引っ張られるっぽくて、だいぶ子供っぽくなっちゃってるけど」

「なるほど?………まぁ、それは置いときまして」

「おいとかないで?」

「お嬢様が【悪夢】に居を構えると言い出した時は死を覚悟いたしましたが、意外と何とかなるものですね」

「そりゃ、勝算が無かったら私だってこんな事しないよ」


 ─────悪夢。

 アルスシール政府軍の防衛拠点、マッドナグ要塞の北方に位置する、大森林。

 かつて、幾度となく政府軍と革命軍の決戦の舞台となったこの場所では、無数の人間が死に、その血が、血中の魔力が大地に吸われていった。

 何万、何十万、何百万と言う膨大な数の死体と、そこから流出した魔力によって、この森の生態系は尋常ではない歪な進化を遂げている。

 具体的に言えば、他所の土地で一帯のヌシを張れるような魔物がここでは中堅扱いされるレベルなのだとか。


 そんなわけで、まともな奴なら近づかない超危険地帯であるここは、だが、裏を返せば、人がほぼ来ない隔絶された魔境と言うわけだ。


 ………正直、今はあまり、人と関わりたいとは思えない。


 やばい魔獣と人間のどっちか選べと言われて魔獣を選ぶ程度には、しばらく人間と会いたくない。


 暗い方向に転がりかけた思考を、叩き戻して、


「ま、こんなクソみたいな土地に踏み入ってくる命知らずとかそういるわけないし、問題ないでしょ」

「お嬢様。そういうのフラグって言うんですよ」

「リナぁ?縁起でもないこと言うのやめてくれる?」

「申し訳ございません、お嬢様。………それで、どうなさいますか?」

「ん~………今日はもう寝よっか。疲れたし」

「承知いたしました、お嬢様」












「この館の住人に告ぐ!!諸君らは包囲されている!!速やかに武器を捨てて投降しろ!!!」

「………」

「お嬢様!!ステイ!ステイです!!顔、女の子がしちゃいけない顔になっちゃってます!!!」




今週のビックリドッキリメカ。


武器頭(アイアンヘッズ)シリーズ。

ジュジュの開発した完全自立型の射撃人形。

搭載した弾薬はそこまで多くないし、反応速度、精密性、機動力の面において熟練の兵士に遠く及ばない程度。

 ぶっちゃけ側近クラスなら大した敵にはならない。

だが、コレの真価は、人の手によらない攻撃という点にある。

自ら動き、敵を攻撃する意思なき人形は、ある意味では人が人を殺す戦争の終わりを告げる存在でもある。

量産可能な意思なき人形が意思もつ人間を殺す、新しい形の地獄は、地球ですら見られなかった、新時代の闘争なのだろうか。


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