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第11話:劇的身体改造!悪の改造怪人ってこんな気分なのか~

すみません、諸々の都合で少し遅れました。

2連で投稿するので許してください。

ではではー。





 ざぁざぁと降りしきる雨の音に、意識が覚醒した。


 体を起こそうとして、なにか、重たいモノに乗っかられて身動きが取れない。


 少し暑苦しいような、けれども、妙に心地の良いソレを、なんとか、撥ね退けようとして。



「………」

「………」



 毛布の中から覗く、朱金色の視線。


 ものっすごいジト目の、鶯色の髪をした幼女が、ネコか何かみたいに丸くなったまま、私のお腹の上でスタンバってた。

 一瞬で状況が私の理解を超えたのがわかったので、とりあえずベッドから出ようとして、布団の中からにゅっと生えた腕に拘束される。

 いつの間にいたのか、ひまわりの花びらのような明るいオレンジ色の髪の幼女が、口の端からよだれを垂らしたまま爆睡していた。

 ………これは流石に動けないというか、いくら私でも、この状態の幼女を引っぺがして起きるのは、心が痛むというかなんというか………


「あの~………、ちょっと、いい、かな?」

「………だめ」


 会話が通じることを祈りつつ起きてた方の幼女に話しかけて、やや舌っ足らずな拒絶が返ってきた。

 う~ん、ダメみたいですね。

 小さな手で私のほっぺたをプニプニする幼女を、何とか止めようとして。



「………皆さん。夜ごはんが出来ましたよ。さぁ、早く来て下さ」

「あっ、リナ!助けてヘルプミー!!」



 ガチャリとドアを開けて、見慣れたメイドさんが入ってきた。

 なんだか久々にあった気がするリナに助けを求めて、スンッて感じの顔でリナが硬直した。


 そのまま見つめ合うことしばらく、黙りこくったままのリナが、音もなく近寄ってきて。



「………あ、あの、リナさん?その、ずっと黙っていられると、少し怖」



 その瞬間、凄まじい膂力で抱き絞められた!!!



「グッ、グワーーっ!?ちょっ、リナ、タンマ!マジでタンマ!!中身漏れちゃう!中身漏れちゃうからぁ!!!」

「………っ!!」

「アダッダダダダダダ!?!?!?」

「お前ら静かにしやがれ!!ここは病院だ!うるさくすんなら出てってもらうからな!!」



 おろおろする幼女といまだぐっすり眠る幼女、ついでにベアハッグ喰らって失神寸前の幼女()とメイド。

 混沌とした密室に乱入してきたおっさんの大声を聞きながら、私は目覚めたばかりの意識を喪失した。























「ふむふむ………つまり、リナが頑張ってくれなかったら私ら全滅してたと」

「ま、大体そういうこったな」


 院長らしき赤髪のオッサンが買ってきてくれたハムとトマトとチーズのサンドイッチをベッドの中でモグモグしつつ話を聞いて、衝撃の事実が判明した。


 なんと、リナ、例の洞窟でぶっ倒れてた私&幼女×2を担いで、クソどもを撒きつつ雨の中、この街まで逃げてきたのだという。

 しかも。


「………リナ、その腕、本当に大丈夫なの?」

「ええ。《火ノ球(ファイヤボール)》で吹き飛ばされたのを処置するときに、肘から先は上手く残せましたので。万全とは言えませんが、動作に問題はありません」


 なんでもない事のようにけろっというリナの左手は、球体関節人形のソレに類似した、木製のものに置き換わっていた。

 ………十数名の武装した人間相手に1人で大立ち回りして、腕一本で済ませるというのも、空恐ろしい話だ。

 ついでに言えば、今はあの日から4日目の夜とのこと。

 私、結構長い間意識不明だったのか。

 ………なんというか、前世で腹切った時といい、今世で記憶を取り戻した時といい、私、結構な頻度で意識不明に陥ってる気がする。

 昏睡系幼女………いや、ナシだな。


 バカげた考えを振り払って。



「それで………デッカードさん、で、いいんですよね?」

「おう、あってるぞ。………名乗ってもないのによくわかったな?」

「パパが、最期に、貴方を頼れと言ってくれたので」

「………そう、か。………実をいうとな、俺は元々、政府軍の従軍医師だったんだ。もう、18年も前になるか。バビロン平原の大戦で、革命軍の強襲部隊の襲撃を受けて、全滅する寸前で2人に助けられてな。………2人のことは残念だが、頼りにされたなら、応えなくちゃならん。…………それで、ジュジュちゃん、言いにくいんだが、その」

「足を切り落とさなきゃいけないんですよね?」

「………よく、わかったな」

「自分の体の事なので」


 ベッドサイドのテーブルのコップに手を伸ばして、リナがよく冷えた水を注いでくれた。


 乾いた喉を、湿らせて。



「さっきからずっと、自分の脚から変な臭いがしていたので。あとは、疼痛と熱が酷いので、状況的に考えたら細菌に感染して壊死したんじゃないかな~と。………あと、多分ですけど、足の指も何本か欠けてますし、右目も潰れてますよね?」



 というか、私の記憶にある限りでは、両足とも開放骨折してたはずだし、そりゃ、壊死もするわなって感じだし。


 この世界の医療技術じゃ、重篤な感染症を防ぐためにも足を切り落とすのが一番賢い選択肢なのは間違いないだろう。

 右目に関しては、普通に銃で撃たれて吹っ飛んでたし、うん。



「てなわけでさっさと切っちゃってください。こう、ズバッと」

「………」

「? デッカードさん?どうかしたんですか?」

「お嬢様」

「なに?」

「普通、11歳の女子は、自分の足を早く切るように言ったりしません」

「なるほど?」


 苦虫を口いっぱいに嚙み潰したような顔のデッカードさんにどうかしたのか尋ねて、嫌に優しい目のリナにそう言われた。

 私に抱き着いたまま「うぬ~~………」と呻くような声を漏らして眠る幼女。

 出来心に負けて鼻を摘まんで「ふがっ!?」と可愛らしい悲鳴(?)を上げる幼女。

 可愛い。

 幼女かわいい。

 ………おかしいな、私、ロリではあってもロリコンじゃなかったはずなんだが………まぁ、別にいいか。


「というわけでデッカードさん、こう、ズバッと逝っちゃってください」

「………リナリアの嬢ちゃん、あんたのお嬢様は、いつもこんな感じなのか?」

「はい。魅力的で可愛らしいですよね」

「???」


 宇宙ネコめいた表情のデッカードさんが、メスやらイトノコギリやら手術道具を用意し始めた。


 意外と聡いのか、私の首に顔をうずめて匂いを嗅いでいた幼女が、眠っていた幼女を抱えてベッドから降りた。

 私を抱えたリナが、大きめの診察台の上に、私の体を横たえ。



「………あの、デッカードさん?」

「なんだ?」

「いえ、その、麻酔は」

「ないぞ。我慢してくれ」


 メスの刃を消毒しつつ、防毒マスクと白いエプロンめいた服を着込むデッカードさん。


 ………麻酔なしの両足切除手術って、マジですか?



「いや、あの、その、何と言いますか、初めてなので優しくして」

「すまない。手早く済ませるから許してくれ」

「やっ、ちょっ、にぎゃーーーーっ!?!??!?」






 …………個人的には、両足の骨をイトノコで切る時が一番痛かったです、はい。



















「………しぬかとおもった」

「ですが、艶のある良い悲鳴でしたよ、お嬢様」

「リナってさぁ!ひょっとしてレズのサディストだったりするのかな!?」

「いえ。単に相手がお嬢様だからです」

「えぇ………」




 病室の天井を見上げつつ溜息を零し、リナが変態チックなことを言ってきた。


 なんだか疲れたし、さっきから視界が妙に黄色っぽいというか、うん、ほんと、マジできつかった。


 前世でハラキリして内臓引きずり出した時とおんなじくらい痛かったぞ、マジで。


 さっきから幼女×2も心配そうに私を見てるし。


「………なぁ、ジュジュちゃん、1つ、聞いてもいいか?」

「なんです?自分の脚が死蝋みたいになってたことの感想ならまた今度でお願いします」


 ベッドサイド、少し離れたところに置かれていた私の両足………だったものは、思いっきり腐敗して、黒変していた。


 しっかしまぁ………両足とも、膝から下も残せなかったのは、少し痛いな。

 左足は膝関節の少し上から、右足に至っては太ももの真ん中あたりから切り落とすことになってしまった。

 ライフルで膝ブチ抜かれてたから、当たり前っちゃあ当たり前の事なんだけども………ぐぬぬ。

 これからの目的の事もあるし、まずは義足の設計からだな。



「………いや、そうじゃなくてな。………ジュジュちゃん、その、これからどうするんだ?」

「えっ?ずっと置いてくれないんですか?」

「いや、その、流石に4人も養うのは無理があ」

「わかってます。小粋なジョークってやつです。………それに、多分ですけど、私たち、追われてるんでしょう?」

「………ああ、そうだ。仕留めそこなったことに気づいたんだろうな、町のチンピラが、血眼になって嗅ぎまわってる。俺は顔が広いから何とか誤魔化せてるが、早いうちに何とかしなくちゃマズい事に」

「それもわかってます。………それで、質問なんですけど、今、私の家ってどうなってます?」

「………俺も、詳しくは知らないが、貴族っぽい若いのが団体様で押し掛けたって話は聞いた。俺に言えるのはソレくらいだ」

「………なるほど」


 気合を入れてふかふかベッドから上体を起こして。



「ねぇ、リナリナ」

「リナリアです、お嬢様」

「リナリアが貴族一家を殺す依頼を受けたチンピラだったとして、雨の森の中、わざわざ手負いのガキを追いかけて殺そうと思う?」

「………私なら、そうは思わないかと」

「だよね。ましてや魔法の使えない劣等髪の貴族のガキの一匹、ほっといてもくたばるって考えるのが普通だし、あの洞窟でお仲間がバラバラになってるのを見ても、私がやったって考えるとは思えない。劣等髪のメスガキが、大の大人を何人もバラバラに引き裂くとか、フツーは考えないでしょ?」

「おい、ジュジュちゃん、いったい何の話をして」

「私が言いたいのはね、デッカードさん。私が魔法を使えるっていう事実は秘匿されていたことと、それを知っている人間は、屋敷にいた人間の、それもごく一部だけってことだよ。………それに、デッカードさん、さっき、チンピラが血眼になって私を探してるって言ってたよね?それってさ、殺してないのが依頼主にバレたから必死になったってことじゃないのかな?つまり、襲撃者共に依頼した腐れ外道は、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()ってことじゃん?という事は、黒幕は私の魔法が非常に暴力的なものだと知っていて、それによって復讐される事を恐れている………要するに、私にズタズタに叩きのめされたことのある人間なんだよね。んでもって、私はそういう連中に、1つだけ心当たりがある」



 そこまで一気に言い切って、リナがコップに冷えた水を注いでくれた。


 歯の根に沁みるほど冷たいソレを、一気に飲み干して。



「………ねぇ、リナ。これは事実確認なんだけど、パパとママは、死んじゃったんだよね」

「………はい、その通りです」

「じゃあ、この場合、2人の財産は私が継承することになるよね?」

「はい」

「ついでに言えば、私以外の親族も全滅してるわけだから、家督も私が継ぐわけだ」

「はい」

「………おい、アンタら、さっきから、何の話をして」

「デッカードさん。ネモフィラ家次期当主、ジュジュ・ネモフィラとして、貴方に依頼があります。………私の、八つ当たりに、協力してもらえませんか?」





















「………ジュジュちゃん、それは無理だ。頼まれればいくらでも匿ってやるし、逃げる手伝いもしてやる。だが、復讐なんて、そんなの誰も望んじゃな」

「耳が遠いみたいですね、デッカードさん。これは復讐じゃありませんし、そもそも、そんな事をしても死んだ人は還ってこないし、奇跡みたいに動き出すこともありません。ママはもう二度と料理を作ってくれないし、パパに頭を撫でてもらえることもない。それが事実です。………ですが、それじゃ、私の気が収まらないんですよ。アイツらの関係者全員をバラバラにズタズタに引き裂いて殺して殺して殺して殺し尽くさないと、気が変になりそうなんです」

「………」

「それに、家族を全員殺された小娘が泣き寝入りして、当のクソどもがぬくぬくと生き続けるなんて事になったら、正義なんてどこにもないじゃないですか。私はそんなの認めませんよ、ええ、認めてやるものですか」


 気おされたのか、幼女2人が怯えたような顔で後退るのを尻目に、大きく息をついて。


「………ああ、それと、これは独り言ですが、デッカードさんが手伝ってくれてもくれなくても、私はいずれあの屋敷に突っ込みますよ?敵がどれだけいても、勝ち目があろうがなかろうが関係ありません、可能な限りアイツらを殺してから討ち死にします。………もちろん、デッカードさんが手伝ってくれなきゃ絶対に死ぬわけでもありませんし、手伝ってもらっても力及ばず躯を晒す可能性は十二分にありますが………まぁ、その時はその時です、お墓に花の1つくらいは供えてく」

「………ったよ」

「?すみません、よく聞こえなかったのでもう一度」

「わかったよ!!やるよ、やりゃあいいんだろ!?ああっ、くそっ、チクショウ!!」

「ありがとうございます、デッカードさん」


「うっがあぁああああああ!?!?!?」とか絶叫しつつ仰け反るデッカードさんにお礼を言って、頭をワシャワシャ搔き毟っていたデッカードさんが、ぐったりとうなだれた。

 なんだか少し愉快なソレに思わず笑みが零れ。


「………それで、俺ぁ、何をすりゃいいんだ?」

「そうですね………紙とペンって持ってます?」

「あ?ソレくらいならまぁ持ってるが」

「じゃあ、ちょっと貸してくださいな」


 受け取ったそれに、テキパキと欲しいものを書いていって。


「すみません、コレの調達って出来ます?」

「あ~………他はジャンク屋あたれば行けると思うが、この、アメジストは多分無理だな。値段が張りすぎる」

「じゃあ、私のポーチの中のお財布から金貨を何枚か持ってってください。それで足りるはずなので」

「………ジュジュちゃん、なんでそんな大金持ってんだ?」

「私、これでも富裕層の娘ですよ?これくらい持っていて当然です」

「………そうか。んじゃ、行ってくる。あまり無茶はすんなよ?」

「無茶も何も、足がないので動けないじゃないですか」

「………なんか、その、すまん」



 (´・ω・`)って感じの顔になったデッカードさんがコートを着て出ていくのを尻目に、ベッドに体を預けて。



「………あの、リナさん?」



 リナが、据わった眼で私を見下ろしていた。


 なんだか妙な威圧感を感じるソレに、全身が硬直し。


「お嬢様」

「は、はい」

「私に、何か隠していらっしゃいませんか?」




 わーお、キラーパスだー。






次回予告


意識が回復してそうそう目ン玉ブッコ抜かれた挙句に両足ぶった切られてしまったジュジュちゃん!!(医療行為)

復讐のため義足製作に乗り出したジュジュちゃんが捻りだしたものとは─────!?



「………お嬢様?それは一体………?」

「恐れよ、私こそが浮遊ミサイルタンクマンだ」

「(´・ω・`)」


次回「なんだかんだ言って相手のケツの穴にパイル捻じ込む時が一番気持ちいい」


ぜってぇ見てくれよな!!



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