支配者
「久しぶりだな。俺の支配から抜けて逃げたお前が戻ってくるとは」
周りにいるモンスターよりも圧倒的なオーラを肌で感じた。するとその人は視線を僕に映した。
「ん?そこのガキは誰だ」
「私の弟よ」
「まあいいお前さえ捕えられればな」
見た目は若そうに見える20代から30代前後か…。それに鋭い目付きをしている。
「お前こそ誰なんだ」
「俺はアレム」
アレム…そういえばレインさんが言ってた…あの…
「俺の目的は現実世界の人間を滅ぼすこと。そのためにはまず現実世界に移動出来なきゃ話にならん。だから俺は今こいつの力が必要だ。」
「人間を滅ぼす…何を言ってるんだ」
「お前には関係ない。」
レインが言った。
「奈津影君あなたは逃げて」
「でもレインさんは戦えないじゃないですか!」
「大丈夫。なんとかするから」
自分に能力があることは分かっている。何度もモンスターを狩って試した。しかしアレムを目の前にして圧倒的な力の差を感じた。
「クッッ」
僕は逃げるか戦うかの究極の2択に迫られていた。アレムの目的はレインさんだ。僕は簡単に逃げられるだろう。ただ逃げたところでレインさんが捕まってしまっては転生した世界に取り残されてしまう。しまいには現実世界へ侵攻されて全て終わりだ。ただ戦ったところで死ぬのは目に見えている。
「くそっ。どうすればいいんだ」
この場合の最適解…それは…
「ここで倒す!」
「奈津影!」
僕は空を飛んでそのまま蹴りを入れようとした。すると
「オブジェクト・アビリティ 発動 ブラック テリトリー」
唱えた瞬間アレムの目の前に黒い壁ができて防がれた。その瞬間すぐに壁が消え腹に1発強烈なパンチを食らった。
「グァァァッ」
僕はその場にうずくまり立ち上がることさえできなかった。
「まさかそのガキも俺と同じ能力を持っていたとは…どうやってあの飴を入手したのが知らんが全く使いこなせていないようだな」
何も出来ない自分がただただ悔しかった。