転生者
何だこの違和感は。この飴を食べたせいか…。こうして考えていると紫色の髪の女性が急に目の前にテレポートしてきたかのように現れる。
「私はレスト・レイン転生者よ」
「転生?それって…」
「"死んだ人が転生した世界"のこと」
その言葉を聞いた瞬間とても嬉しい気持ちになった。もしかしたら姉は転生していて向こう側の世界で上手くやっているのではないかと思ったのだ。
「何故この世界に私と同じ能力者がいるの」
僕はもしかして…と思い事情を説明した。
「この飴をおばあさんから貰って食べてみたんです」
と言い空のパッケージをみせると
「これは…アンレット国が開発した飴…なぜこっちの世界にこの飴が…」
レスト・レインと名乗る女性は不思議そうにパッケージを見つめていた。
「アンレット国って転生した世界のことですか?」
「転生した世界には国がいくつかあってその中の1つにアンレット国があってね。この飴はそのアンレット国の支配者アレムが研究を重ねて作ったものなの。」
「なるほど…なんでこの飴を?」
「私は2年前、家に帰っている途中で後ろから車が突っ込んできて転生したのだけれど、運悪くアンレット国に転生してしまったの。アンレット国の支配者アレムは転生してきた人間を研究材料にしていて、そこで私は飴を食べさせられ、この能力を得たって訳なのよ」
「そのアレムって人は何が目的なんだろう?」
「わからない…ただこの能力の適応者を探して戦力の増加を目的としているのかも。」
転生した世界で何が起こっているのかよく分からなかったがとにかくやばそうなことが起こっていることには間違いなさそうだ。
「さっきの話に戻るけど…その…飴をくれたおばあさんは洗脳されて利用されていたかもしれない。でも誰がそんなことを…」
僕はおばあさんが言っていたことを思い出す。
「おばあさんは"昔から大好きな飴"と言っていました。もしかすると記憶を改変されているのかも」
「その可能性はありそうね。この世界でその飴を流通させることに何か意味があるのかもしれない」
「うーん…」
5秒ほど無言になる。
「そういえばあなたの名前を聞いてなかったわね」
「僕は奈津影悠火です」
「いい名ね」
「ありがとうございます…」
「私がこの世界に戻ってきたのはアレムの目的を止めるために来たの。私の能力は味方を補助する能力しか備わってないからね。」
「それで能力を使うためにはどうすればいいんですか?」
「いまあなたの右手にはチップが入っている。手を広げてみて」
手を広げてみると真ん中から光が出てきた。
「それをオブジェクトにかざしてスキャンすると能力を得ることが出来るの。何かスキャンするものを選んでみて」
僕は周りを見渡した。すると棚に飾ってあるドラゴンが目に写った。
「姉から貰ったこの赤いドラゴンにするよ。これは姉が学校の授業の課題で作ったもので、私の部屋には合わないからって僕にくれたんだ」
そうして僕はドラゴンに光を当てた。
"オブジェクトを確認しましたスキャンを開始します"
"スキャンが完了しました"
「成功したみたいね。早速能力を試してみない?」
「はい!使ってみたいです!」
「ここで使うと家が壊れるかもしれないからテレポートしましょう」
と言い右手を広げ地面に向ける。
「オブジェクト・アビリティ発動 空間転移」
すると円状の黒いワープホールが現れた。
「じゃあ先行くわね」
そう言ってレスト・レインは飛び込んで行った。僕は人生で1番ワクワクしていた。アニメや漫画の世界だけだと思っていた特殊能力が使えるのかもしれないのだから。僕も続けて飛び込んだ。