休日
「よく眠れたかの」
純ちゃんはいつもどおり、僕よりも早く起きて、朝食の準備をしている。
「はい。疲れもすっかり取れました」
「ふぉふぉ。若いと回復も早いな」
今日の朝食は変わらず野菜炒めだったが、相変わらず美味しかった。
「どうじゃ?今日はワシも農作業は休みだから、一緒に村の外でも回るかの?」
村の外というと、昨日のゴブリンが思い出されたため、行くのは少し躊躇われた。
「昨日の今日だとちょっと…」
「そうかの。無理はするでない」
かといって、家にいてもすることはない。せっかく異世界に来たのだから、何もしないのはもったいない気もした。純ちゃんは、リュックサックに何やら詰め込んでいて、出かける準備を進めている。
「じゃあ、ゆっくり休むといい」
「ちょっとやっぱり待って下さい」
「ん?気でも変わったかの」
「はい。せっかくの休みにもったいないので、やっぱり一緒に行きます」
「了解じゃ!」
純ちゃんは少し嬉しそうな表情をしている。誰かと一緒に出かけるのが、久々なのかもしれない。そういう僕も少しワクワクしてきた。
準備をして早速出発した。一体どこに行くのだろうか。昨日命がけで辺りを散策したかぎり、何もなかったように思う。
しばらく歩いていたが、純ちゃんが突然と足を止めた。目的地に着いたのかもしれない。辺りを見回すと、大きな石が点在している。
「ここはどこですか?」
純ちゃんの方を見ると、目を閉じて両手を合わせている。僕は察して、一緒に両手を合わせた。しばらくすると、純ちゃんがゆっくりと目を開けた。
「おっと、悪い。ここがどこかって聞いたかの?」
「はい。ここって何方か達のお墓ですよね」
「うむ、そうじゃ」
純ちゃんは僕となぜここに来たのだろうか。僕がいてもいなくてもここに来たのだろうか。僕の思いを察してか、純ちゃんが続けてしゃべる。
「タモさんを連れて来たのには、実は理由があるんじゃ」
「えっと、何ですか?」
「この村に来たのも何かの縁じゃ。驚かないで、聞いてほしい」
純ちゃんは、いつにもなく真剣な顔つきをして、語り始めた。