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【完結】キスの練習相手は幼馴染で好きな人【連載版】  作者: 猫都299


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29 布告


 次の休み時間。柚佳が席を立った。こっちへ歩いて来る。


「ゆ……」


 顔を上げて声を掛けようとした。けれど彼女はオレの机の前を通り過ぎ、その行先は左後方の……窓際にある篤の席だった。


 …………分かってた。


 心の中で強がり、皮肉を込めて自分を嗤った。

 オレがしなければならない事が明確に決まった。



 立ち上がり、花山さんの机の前へ歩む。重ねたノートを整えて次の授業の準備をしていた彼女と目が合う。


「海里君。さっきの授業中、あのメモ読んでくれてたね」


 ふわっと花が綻ぶように優しげな微笑みをくれる。


「ああ」


 オレも彼女に微笑み返す。右手に握っていた件のメモを広げる。


「『キスしてた子と会わせてあげる』って書いてるけど、本当に?」


「ええ、任せて。彼女とコンタクトを取れるわ」


「彼女……何者?」


「それは……。詳しくは放課後に教えてあげる」


「分かった」


 笑みを深める。


「花山さん、ありがとう」


 花山さんの瞳を正面から見つめて、心を込めた言葉を口にした。彼女がくれたメモを掲げて、もう一度見る。可愛い紙に、可愛い文字。フッと微笑む。



「でもごめんな」


 花山さんの目の前でビリビリに破いた。細かくなったところで手から放つと、机上に花弁のように散る。


 いつの間にか、花山さんから笑みが消えていた。硬直したような顔で見てくる。微笑みかけた。


「花山さんは何か勘違いしてるみたいだから教えるけど、オレはその子とキスしてないよ。知らなかったの?」


 机に両手をついて、間近から瞳を覗き込む。


「オレがキスするのはその子じゃないよ」


 真顔で冷たく言い捨てた。机から手を離し上体を起こす。


 柚佳の方を見た。柚佳もオレたちを見ていた。傍に立つ篤も。周囲にいるクラスメイトの大半がオレと花山さんを見てヒソヒソ話をするようにざわめいている。


 柚佳に「篤と一緒に帰らないでほしい」と言いたい気持ちをグッと抑える。背を向けた。ここは居心地が悪い。少しの間……休み時間が終わるまで別の場所にいよう。心の内に決め、廊下へ出ようとしていた。



「美南ちゃんごめん!」



 後方で大きな声がした。柚佳の。


 振り返る。


 呆然とした様子の花山さんへ歩む姿が視界に入る。彼女は花山さんの左横で足を止め、泣き出しそうに歪めた顔をして打ち明けた。


「私、約束を破ったの。黙っててって言われた事、邪魔しないでって言われた事……守らなかったの。…………今、海里と付き合ってる。抜け駆けだし卑怯だったと思うけど、でも……ごめんね。海里は渡せない」


追記2024.5.18

「に微笑む花山さん」を「な微笑みをくれる」に、「歩みを進める」を「歩む」に修正、「が視界に入った」を追加、「その」を削除しました。


追記2025.9.19

「立ち上がって」を「席を立った。」、「行く先」を「行先」、「オレは益々笑みを濃くした」を「笑みを深める」、「いつの間にか笑みが消えた顔で硬直したようにオレを見ている花山さんに微笑みかける」を「いつの間にか、花山さんから笑みが消えていた。硬直したような顔で見てくる。微笑みかけた」、「こっち」を「オレたち」、「抑えて」を「抑える。」、「そう決めて」を「心の内に決め、」、「と」を「。」に修正、「それを」「柚佳の」「と」を削除、「「」「」」を追加、改行とスペースを調整しました。

「、」を追加しました。

「入った」を「入る」、「打ち明ける」を「打ち明けた」に修正しました。

「、」を追加しました。

「、」を追加しました。


追記2025.9.24

「オレは」を削除、「かけよう」を「掛けよう」に修正しました。

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