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【完結】キスの練習相手は幼馴染で好きな人【連載版】  作者: 猫都299


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21 擦れ違い


 放課後になるまで話をする機会を作れなかった。真っ先に教室を出て行く柚佳を追い掛ける。


 急ごうとしていたのにタイミングが悪く……廊下の前方に隣のクラスの奴らが出て来た。わらわらとした人波に阻まれて距離が開く。


 追いついたのはバス停へ下る坂の途中だった。四、五メートル離れた先を歩く後ろ姿へ呼び掛ける。


「柚佳っ、オレっ、花山さんとは何もないから! オレは柚佳が……!」


「分かってる!」


 全部を言い切る前に、大きめの声で遮られた。


「分かって、る……?」


 息を整えながら、口の中で繰り返す。


 バスは通るけど、さして広くもない道にいる。一段ほど高く造られた歩道の端には白い手すりが続いていて、その外側は雑草の生い茂る斜面になっている。薄の揺れる先には、民家の屋根や遠くの山並みが広がっていた。


 スカートがはためいた。彼女が振り返る。微笑みを向けられた。

 悲しいのを無理に笑っているみたいな表情だった。胸に痛みを覚える。



「ごめんね。私、本当は知ってたんだ」


 柚佳の言葉に何故だろう……不安が過る。ドクンドクンと脈が響くのを感じる。渇いた唇を動かした。


「何を?」


 オレを見ていた彼女は、再び微笑んだ。



「海里が美南ちゃんを好きな事。二人が両想いだった事」



 背筋が薄ら寒い。柚佳は一体、何を言ってるんだ?



「ゆ……」


「あっ、バス来たよ! 急ごう!」


 柚佳のとんでもない勘違いが何で起こったのか問おうと口を開いたけど、タイミングが悪く……坂の上からバスが来た。二人バス停へと走り、間に合って乗った。


 車中では、お互いに何も話さなかった。窓側に座った柚佳は、ずっと外を眺めていた。






 いつもの、小学校前のバス停で降りた。乗る時と違って……広い道路を隔てた反対側のバス停だ。


 話をするのを拒むように早足に先を行く背を睨んでいる。数メートル後をつかず離れず歩きながら。憤っていた。


 柚佳が何であんな勘違いをしていたのか知らないけど、少しはオレの言葉を信じてくれたっていいじゃないか。


 考えていたら、またも沸々と怒りが湧く。



 細い道を抜けた。車も通れる幅の道に出て、少し進む。オレたちの住んでいるアパートが見えてきた。


 アパートの隣にある空き地の前で、柚佳の左手を掴んだ。振り向こうとする彼女を引き寄せて、耳に囁く。


「今日も練習、するよね?」


 近付けていた顔を離す。表情を読んだ。見開かれた目が惑うようにオレの視線から逃げている。俯き頬を赤らめて……幼馴染は言い淀む。


「え? ……っと……」


 煮え切らない様子だった。けれど、返事は待たずに手を引く。

 怒りに任せた足取りでアパートの階段を上った。ドアの鍵を開ける。手は繋いだままだ。



 玄関に引き込んで鍵を締めた。



追記2022.11.4

「で先に行ってしまう」を「に先を行く」に修正しました。


追記2024.5.12

「柚佳。オレはそんな彼女の数メートル後をつかず離れず歩きながら憤っていた」を「背を睨んでいる。数メートル後をつかず離れず歩きながら。憤っていた」に、「見開いていた瞳を彷徨わせ、俯き頬を赤らめた幼馴染」を「見開かれた目が惑うようにオレの視線から逃げている。俯き頬を赤らめて幼馴染は言い淀む」に修正しました。


追記2025.9.4

「放課後になるまで柚佳と話をする機会を作れなかった。真っ先に教室を出て行く彼女を追いかけた。ちょうど隣のクラスの生徒らがわらわら廊下へ出て来たので阻まれて彼女との距離が開く」を「放課後になるまで話をする機会を作れなかった。真っ先に教室を出て行く柚佳を追い掛ける。急ごうとしていたのにタイミングが悪く……廊下の前方に隣のクラスの奴らが出て来た。わらわらとした人波に阻まれて距離が開く」、「かける」を「掛ける」、「バスは通るけど、さして広くもない道路。一段高く造られた歩道の端には白い手すりが続いていて、その外側は雑草の生い茂る斜面になっている。薄の揺れるその先には民家の屋根や遠くの山並みが広がっている」を「バスは通るけど、さして広くもない道にいる。一段ほど高く造られた歩道の端には白い手すりが続いていて、その外側は雑草の生い茂る斜面になっている。薄の揺れる先には、民家の屋根や遠くの山並みが広がっていた」、「両手で鞄を持った彼女は振り向いて微笑んだ。悲しいのを無理に笑っているみたいな表情で、オレは胸に痛みを覚えた」を「スカートが風に揺れる。彼女が振り向いた。両手で鞄を持ち、微笑んでいる。悲しいのを無理に笑っているみたいな表情だった。胸に痛みを覚える」、「彼女の言葉に何故か不安が過る。ドクンドクンと脈が響くのを感じる。渇いた唇でやっと声を紡いだ」を「柚佳の言葉に何故だろう……不安が過る。ドクンドクンと脈が響くのを感じる。渇いた唇でやっと紡いだ」、「細い道を抜けて車も通れる幅の道に出る。少し進むと」を「細い道を抜けた。車も通れる幅の道に出て、少し進む。」、「囁いた」を「囁く」、「近付けていた顔を離してその表情を読む。見開かれた目が惑うようにオレの視線から逃げている」を「近付けていた顔を離す。表情を読んだ。見開かれた目が惑うようにオレの視線から逃げている」、「煮え切らない様子だったけど、」を「煮え切らない様子だった。けれど、」、「上る」を「上った」に修正、「、」(六カ所)「を」「では」「……」(二カ所)「も」を追加、「その」(二カ所)「その間中ずっと」を削除、改行とスペースを調整しました。

「スカートが風に揺れる。彼女が振り向いた。両手で鞄を持ち、微笑んでいる」を「スカートがはためいた。彼女が振り返る。微笑みを向けられた」に修正、「彼女の言葉を」を削除、改行を調整しました。

「、」を追加しました。

「渇いた唇でやっと紡いだ」を「渇いた唇を動かした」に修正しました。

「タイミング悪く」を「タイミングが悪く……」に修正しました。

改行を調整しました。

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