2.勝利への執念。
戦闘パートです(*‘ω‘ *)
ちょっと長め?
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――戦闘能力の差は、一目瞭然だった。
決闘開始と同時に、ボクはガンスから大きく距離を取る。しかし彼もそれは想定内であったらしく、こちらの動きを確認すると一気に距離を詰めてきた。
最初の一撃は右から。
彼の持った戦斧は下段に構えられ、一直線にボクの身体目がけて振るわれた。
「く……!?」
「ほう、それを避けやがるか!」
しかし、分かっていれば躱せない攻撃でもない。
数秒先の未来を頼りに、ボクは思い切り後方へと飛び退った。そうすると、ギリギリのところで相手の攻撃は空を切る。
そのことが意外だったのか、ガンスは驚きながらも愉快そうに笑った。
ボクは借り物の剣を構えつつも、緊張による額の汗を拭う。
「それじゃ、これはどうだぁ!?」
「………………!」
次は、先ほどよりも速い。
息つく間もなく繰り出されたのは、力任せという表現が正しい振りかぶりの一撃だった。数秒先の未来では、ボクはそれによって脳天をかち割られて絶命する。
だけど、そう簡単にやられるわけにはいかない。
大きな動作を必要とする攻撃なら、回避自体は一つ前より簡単だった。
「…………っ!」
今度は思い切って、右手に向かって身体を転がす。
だが、そこで想定外だったのは――。
「な、これは……!?」
周囲の視界を奪うほど、盛大に巻き上がった土煙だ。
それによって、ボクの目の前はひどく不鮮明になってしまう。おそらく、ガンスの本来の目的はこれだったのだろう。こちらの視界を奪い、回避への動作を遅らせる。
普通なら、この時点で詰みだった。
「でも、まだ負けない……!!」
ボクはまた【未来視】を使用する。
相手も索敵を警戒しているのか、足音もなにもない。
ただ沈黙だけが続き、ほんの少しの間が生まれた。だが――。
「うおらああああああああああああああああああああああ!!」
「――そっちか!!」
――次の瞬間だ。
ガンスは、確実に仕留めたと思ったのだろう。
そう声を張り上げボクへと肉薄し、力の限りに戦斧を振り下ろした。
「くそが、ちょこまかと……!!」
それでも、ボクには視えているのだ。
彼がどこから姿を現わし、どの角度で攻撃を繰り出すのか。
それさえ分かれば、回避を続けることは不可能ではない。そして――。
「てめぇ、舐めてやがるのか!」
ガンスのように激しやすい気性の相手なら。
ボクの戦い方には、多大なフラストレーションをため込むはずだった。その証拠に次も、その次の攻撃も、より粗雑なものへと変化していく。
これなら、きっと負けることはない。
ボクはそう確信して、一度相手との間合いを確認するため――。
「え……?」
大きく距離を取ろうとした。
その時、こちらの意図に反して足が思い切りもつれてしまう。その直後、
「が、は……!?」
腹部に、鈍痛が走っていく。
思惑とは違う形で、ボクの身体は後方へと吹き飛んでいく。視界が歪み、前がまともに見ることができない。呼吸も苦しい。手足に痺れがあり、冷や汗が滝のように流れ落ちていった。そんなボクに対して、ゆっくりと距離を詰めてくるのはガンスだ。
「意外にやるじゃねぇか。――参謀様よ」
声を発することのできないボクに対して、彼は鼻で笑いながら言う。
そして、次に――。
「だが、あまりに貧弱だ」
「ごふ……!」
嘲笑うかのようにそう告げると、得物ではなく手の甲でボクの顔面を殴打した。身体に力の入らないボクは、それをもろに喰らって右方向へと転がる。
うずくまり、何もできない。
思考もうまく回らず、ただガンスの攻撃を受けるしかない。
そこからはもう、防戦一方だった。数秒先の未来を視ながら、必死になってガンスの拳を防ぎ続ける。だけど、それにも限界はあった。
――敗因は、明らかだ。
ボクの身体能力は【未来視】で覆せるほど、高くはないこと。
最初に足がもつれた時が、きっと体力の限界だったのだ。それに気付かずに、ボクは……。
「なにか、変な思い違いをしていそうだなぁ……?」
「…………え?」
そう、思っていた時だった。
ガンスが呆れたように、そう口にしたのは。
見れば彼はこちらを見下ろしながら、侮蔑の表情を浮かべていた。
「攻撃を回避し続けたのには、なにか絡繰りがあるんだろう。だがな、お前がオレ様に勝てねぇのは体力以前の問題だ。――それを理解していねぇ、ってのがムカつくぜ」
「体力以前の、問題……?」
ボクはなにか、そこに引っ掛かりを覚えて訊き返す。
するとガンスは静かに、しかし怒りに満ちた声色でこう言うのだった。
「そうだ! てめぇはハナから『勝利』を目指していなかった! ちょこまかと『敗北』という二文字から逃げ回って、時間稼ぎをしていたに過ぎないんだよ!!」
「…………!?」
それを耳にして、ハッとする。
何故なら彼の指摘は、まさしく真であったから。
そうだ。ボクは、何を勘違いしていたのだろう。
ただ逃げ回るだけの先に、勝利なんてない。それが、あるとすれば――!
「だが、それも終わりだァ!」
「く……!?」
そして次の瞬間。
ガンスは終止符を打つため、戦斧を大きく振り上げた。
――どうすればいい。
ボクは、必死に思考を巡らせる。
いや、そんなこと決まり切っている。
「ボクの視る未来は、可能性に過ぎない……!」
だったら、まだやっていないことが山のようにあるはずだ……!
「死ねやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
そう考えた時、ボクの中で何かが弾けた。
◆
――確実に、仕留めたはずだった。
だがガンスの戦斧は、ただ地面を強く叩いたに感触を得たに過ぎない。すなわち、またミトスは彼の攻撃を回避したということ。
そう考えて、彼は苛立ちを隠さずに舌を打った。
「本当にちょこまかと……!」
そして、どこへと行ったのか確認しようと周囲を見た時だ。
「ぐ、あ……!?」
背後から、何者かに斬り付けられたのは。
「てめぇ……!?」
「はっ……は、はっ……!!」
痛みに顔を歪めながら。
ガンスが距離を取って視線を向けた先にいたのは、ミトスだった。
少年は大きく肩で息をして、表情を歪めながら剣を構えている。それには確かに、ガンスの身体を裂いた瞬間に付着した血が滴っていた。
それを見て、ガンスは信じられないと思う。
だが、それと同時に笑みを浮かべるのだ。そして――。
「けっ……!」
小さく、こう呟く。
「面白くなってきたじゃねぇか!」――と。
ガンスは戦斧を構える。
そして、ミトスへと再び肉薄したのだった。
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