ナイフの天才
「ほれ」
そう言いながら今度は懐からナイフを取り出して投げ渡してきた
お、このナイフ。昨日貸してもらった超いいナイフだ
「今度はアレン、お前のナイフ捌きを見てみたい」
俺のナイフ捌きを見たい?…
「それはいいが、どうやって?これは木剣みたいに素振りとかできなくないか?」
「そうだな。昨日ゴブリンを倒した時を思い出しながらやってみてくれ」
「それで何か分かるのか?」
そう言いながらも俺は先ほどと同じように、自分の目の前にゴブリンがこっちを向いて立っているのを想像して
いや、確か、アイツと戦った時は
一度、止める
こんなイメージ、実戦とは違いすぎるよな。もっと。正確に
今度は先ほどよりも深く、精密に、ゴブリンの姿、周囲の木の配置、互いの距離感、風の流れ、そういった周囲の環境も含めたすべてを想像しながら、俺は木の陰に隠れた
はたから見ればさぞ滑稽な姿に見えるだろう
だが、今の俺にはそんなことは毛ほども気にならなかった
完全に集中しきっていてもうそんなものは見えていなかった
ッスー はぁぁ…
飛び跳ねる心臓を抑えるために深く呼吸をしながら、俺は木の陰からゴブリンを観察し、好機を待ち続ける
それから何分たっただろうか。長い時間を待ち続けて、ゴブリンが俺に対して後ろを向いた瞬間
俺は地面を這うように低い姿勢からゴブリンに向かって駆けていく
完全な不意打ち、俺の足音で気づいたゴブリンは振り向くがもう遅い
俺は下から勢いよく跳ね、首目掛けてナイフを振るう
が
ボト
それにギリギリで反応したゴブリンは左腕を犠牲にして首を守った
それを見てすぐさま俺はバックステップで後ろに下がり、再び木陰に身を隠す
「グギャギャ!!!」
俺がどこから攻めてくるか分からないゴブリンは、左腕を抑えながら周囲を警戒しながら威嚇をし続けるが、
ドサ
しばらくして地面に倒れこむ
それを見た俺は木陰に隠れるのを止めて、ゴブリンに近づき、
グサッ
その無防備な首にナイフを突き立てた