剣にふれてみる
「持ってみろ」
そう言うと師匠は、いつもように懐から俺の腕と同じくらいの長さの木剣を取り出して渡してきた
俺は大人しくそれを受け取り、腰よりも上の高さまで持っていくが
「…重」
木剣を構える俺の腕は、少しだけだが、プルプルと震えていた
「だろうな。それを今から何回か振ってもらう」
「分かった。それでやり方は?」
「自分が思うように振ってみろ。一から全部言ったところでどうせ忘れる。俺が直すべきところを一つずつ言ってくから」
そうは言ってもな。俺、誰かが剣を振ってるところなんて見たことないぞ。ナイフなら何度もあるんだが
…考えても仕方ない。とりあえずやってみるか
俺は木剣を高く掲げ、下に向けて勢いよく振り下ろした
「うわ」
すると、俺は木剣の勢いを途中で止めることができず、木剣とともに地面に倒れこんだ
「アレン」
そんな俺を師匠が上から覗き込んでくる
「ああ」
「お前、センスないな」
「判断するの早すぎだろ」
「なんで剣と一緒に転がってるんだよ。お前、もしこれが実戦だったら死んでるぞ」
それはそうだが実戦とか言われても…いや、逆か。これが練習だからこそ実戦を想定した動きをしろってことか
そう考えると、俺が今するべきだった動きは…ダメだ。どっちにしろ分かんねぇ
「じゃあ、どうすればいいんだよ」
「体勢を崩すぐらいなら剣を離す、もしくは転がったらすぐに体勢を正して剣を構える、だな。俺的には転がる前にキチンと剣を止めて欲しかったけどな」
…どっちにしろ体勢を崩さないようにすればいいのか?
「もう一回やってみる」
俺は立ち上がってもう一度剣を構える
はぁぁぁ
深く息を吐き、俺は集中にはいる。意識するのは仮想の敵、そして、体勢を崩さないこと
「……」
…これじゃダメだな。こんな構えじゃ踏ん張りが効かないし、振り終わった後隙だらけになる
「…今の俺の言葉でそこまで分かったのか」
とりあえずこれで一回やってみるか
狙うは相手の首、そこ目掛けて先ほどよりも力強く踏み込み思い切り剣を振るう
ぶぅぅん
心なしか先ほどよりも剣が速く感じる。これは良くなっているの…
「うわ」
俺は再び地面に倒れこんだ
「なんでだよ」
「……」
「そこまでできてるなら最後まで気を抜くなよ」
「いや、やっぱ剣を止められなくて」
「まったく、しょうがないやつだな」