はじまり
はぁ、また今日が来たのか
そう思いながら今日も俺は目を覚ました
俺の名は アレン どこにでもいるただのガキだ
と言っても、俺が住んでいるのは世界的にも美しい都市とされている 水の都 ウィンディーネ
その中でも唯一汚いとされているスラム街だからただのガキというのかは微妙だがな
ぐぅ~
「はぁ…」
なにもしてなくとも腹は減る。それなのに
俺は自分の持っているものを確認するが
・さびていて所々欠けているボロボロのナイフ
・麻の服
それしか見つからない。加えて言うなら貧弱でがりがりな身体だな。俺が持っているものは
はぁ、なにか食う物を探しに行くか
そう考えながら俺は身体を起こして歩き出した
大通りの路地裏
ガサゴソ ガサゴソ
誰もいない路地裏に、何かを漁る音だけが響く
俺の手の動きにはもう迷いがない。何度も繰り返してきたからっていうのもあるし、ちんたらやっているとろくな目に合わないということも知っている
ガサゴソ ガサゴソ
「はぁ、今日はなにもなしか」
そう呟きながら、俺はいつものルートで他の漁り場に移動した
「結局なにもなかったな」
そう呟きながら、俺は空腹の腹を抱えて大通りを歩いていた
ぐぅ~
くそっ、飢えを凌ぐために動き回ったせいで余計に腹が減っちまった
「あはは、まってよ~」
そんな俺の前を笑顔の子供たちが走りぬけていく
アイツらは俺みたいに毎日喰うもんに困って、寝るときにものを盗まれないか警戒しながらろくに眠れない夜を過ごしたことはないんだろうな
俺はこんなに苦労してるってのに
「ちっ!」
馬鹿馬鹿しい。クソみたいな世界だぜ
そんな風に考えながら歩いていた俺の視界に、ある店が映り込んだ
そこでは水の都の名産物 瑞々しいリンゴを大量に売っていた。それこそ、積み上げすぎて店主の顔が見えないほどに
それを見た俺の脳裏に、ある考えが浮かんできた
やっちまうか?
今日まで俺は盗みを働いたことがない。成功しないだろうというのもあるし、ばれた時、俺の身体能力じゃ逃げ切れずつかまってしまうだろうからな。それに
「スラム街のガキが!てめぇ、私の大切な商品を盗もうとしやがって!このダボが!」
そういいながら恰幅のよい店主が俺と同じくスラム街から来たであろうガリガリな子供を容赦なく何度も蹴りつけていた
そして、それを眺めている市民も店主をとめようとはしない。それどころか
「盗みですって」
「あら、怖いですね」
「やっぱりスラム街なんぞで育った人間には悪人しかいないのでしょうね」
そう言って笑いながら、店主の行いを正しいことのように見ている
何が世界的にも美しい都市だ。そんな風に評価した人間の感性には反吐がでるぜ。この街のどこが美しいってんだよ。こんなに人間どもの心が醜いっていうのによ
だから俺は今日まで盗みをしなかった。こんなやつらの思い通りになりたくなかった。意地だけで今日まで罪を犯さずに生きてきた、でも、
もういいだろ
さっきのガキどもを見てはっきりした。生まれが違うだけでこんなにも人生が変わっちまう。どうせ、俺はこれからも一生こんなことをし続けながら生きていくんだろう
だったら、これは将来するか今するかの違いでしかないじゃないか
俺は周囲からの視線が自分に向いてないのを確認しながら、素早く目の前に積みあがっているリンゴへと手を伸ばした
そして、
よし!リンゴをつかめた!あとはこれを誰にもばれずにしまえばいける!
そう思って瞬間
ガシッ
俺の手を後ろから何者かにつかまれた