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#7 部活

 昨日、俺は半強制的に陸上部に入部させられた。

 しかし、部活の活動自体は緩いらしく、練習には毎日参加しなくてもいいらしい。


「今日から練習に参加させていただきます。1年の愛徳拓也なるえたくやです。よろしくお願いします」


 部活が始まる前に軽く挨拶を済ませると、あかね先輩が手を大きく振りながら近づいてきた。


「拓ー! 昨日ぶりー! 早速来てくれてありがとうねー!」


「いえ、長居は出来ないかもしれませんが、よろしくお願いします。茜先輩」


 そう、俺が部活に長居できない理由、それはベンチ(?)のような長椅子に座っている女子2人のせいである。


「たっくーん! 頑張ってー!」


「拓也ー! ファイトー!」


 その2人とは、みお楓花ふうかだ。


 放課後になって、俺は澪に部活行くから先に帰っててくれと言っておいたのだが、なぜか楓花を連れて練習を見に来たのだ。

 そのせいですごく恥ずかしいため、なるべく早く帰りたいのである。



「くそう……拓也は羨ましいなぁ。女子2人がわざわざ見に来てくれる上に、応援までして貰えて……俺は一度もされたことないのによぉ!!」


「ちょっととおるー? みっともないからやめてよー」


「そうは言ってもよぉ!!」


 この人は矢野徹やのとおる

 茜先輩と同級生であり、中学の頃にお世話になった先輩でもある。


 そして徹先輩は今、ひざまずいて自分の走っている姿を異性に見てもらえないのはなんでだ、と言って悔しがっている。

 見ていて面白い先輩だ。


「まぁ、徹は放っておいて……拓にはまず、やってもらわなければならないことがあるの」


「何ですか?」


「タイム計測だよ。とりあえず今日はタイムを計測したら、帰っていいよ。とりあえず今日は拓の実力を見せてもらうね」


「わかりました……」


 俺は中学の頃は短距離を専門にしていた。

 そのため、今日タイムを計測するのは100m、200mの2競技だ。

 一応部活を辞めてからも、トレーニングは欠かさずやっていたし、タイムが大きく落ちている、ということはないだろう。


「じゃあ、早速100mからやるから準備して」


「はい」



 もう随分と履いていないが、手入れはちゃんとしているスパイクを履き、スターティングブロックを久しぶりに調節する。

 どれもこれも懐かしい感覚だ。


「じゃあ始めるよ。On your marks」


 ドクンドクンドクン……


「Set」


 パチン!



 合図とともに、完璧なスタートを切ることができた。


 それに奥では、座っていたはずの澪と楓花が立って応援してくれている。

 そして、他の陸上部の先輩方も練習をやめて、こちらをじっと見つめている。

 注目はあまり浴びたくないんだけどな……


 それでも一歩ずつ着実に前へ前へと進んでいく。


 あと少し……!



 ポチッ!



「はぁはぁ……」


 久しぶりに本気で走ったせいか、前より動悸がするな。


「たっくん、すごい速かったよ!」


「本当にすごいじゃない! 足遅そうな顔してるのに、見かけによらずすごく速かった!」


「……ああ、ありがとう」


 ゴールしてすぐに駆け寄ってきた澪と楓花。

 楓花に関しては、少しディスられてる気がするが……


「拓、お疲れ様」


「あ、ありがとうございます。茜先輩」


 そして茜先輩も駆け寄ってきて、スポーツドリンクを手渡してくれた。


「相変わらず速いねー、拓は。なんと記録は11.14。この部活の中でも3番目に速いわ」


「「嘘!?」」


 声を出して驚いたのは澪と楓花だ。

 正直俺もかなり驚いているが。


 この陸上部は、緩い部活と先輩たちは言っているが、当たり前だがしっかりと速い先輩は速いようだ。

 さすが、どの部活も強豪校と謳われているだけあるな。


「ちなみに1番速い先輩はどれくらいなんですか?」


「確か……10.56とかだった気がする」


「化け物じゃないですか……」


 さすがにこの記録は速すぎる。

 間違いなく全国レベルの選手だろう。


「あの人は次元が違うからね。さあ、次は200mだよ。準備して」


「あ、はい」



 結果は23.65。部内で5番目に速いらしい。


 これからは頑張って、俺より速い先輩に勝ちたい。

 簡単に出来ることではないだろうが、努力あるのみだろう。


「茜先輩。これからもよろしくお願いします」


「うん、よろしくね。また皆で頑張ろう! 拓は全国大会優勝目指して!」


「全国大会優勝!? さすがにそれは……」


 元々中学の時も関東大会で決勝にすら進めなかった俺が、全国大会なんて夢のまた夢だ。

 とりあえず、まずは関東大会で決勝に進めるように頑張らなきゃな。

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