#4 親睦会
「早速、親睦会を始めようと思いま〜す!」
「「「いぇーい!!」」」
昼休みになり、予定通り親睦会をやるため、俺たち4人は屋上に来ていた。
屋上には俺たち以外には誰もいなくて、親睦会をするには最適な場所となっている。
ちなみに俺たち4人とは、俺以外に澪と樹、楓花だ。
「じゃあ、まずは自己紹介しようか」
そう言った澪は、綺麗な瑠璃色の目で俺をじーっと見つめて、たっくんからお願い、と頼んでいるように見えた。
「えーと、俺は愛徳拓也。呼び方は何でもいいから適当に呼んでくれて構わない」
「じゃあ、‴たっくん‴でいい?」
楓花がそう言った瞬間、澪は眉をピクリとさせて、楓花にどんどん近づいていった。
「なんであなたがそう呼ぶのかな〜?」
「冗談、冗談だって! ほんと、その顔怖いからやめて!」
恐らく楓花は朝、澪にやられて仕返ししてやろうと思ったのだろうが、それは叶わなかったようだ。
仕返しできる機会を無駄にして、しょんぼりしている。
ドンマイ、楓花。
「ふー、じゃあ次は私ね! 天沢楓花でーす。よろしくね〜」
「俺は東雲樹だ。よろしく」
「私は新垣澪。よろしく」
皆の自己紹介が終わり、次は質問タイムに移る。
質問タイムとは、皆の自己紹介が終わったら、気になったことを質問をし合おうと、事前にやることが決まっていた。
しかし、この質問タイムは鬼畜だ。
なんと質問されたことには、絶対に答えなければならないのだ。
そう、黙秘するのは厳禁という最悪なルール付きなのである。
「では、質問します!」
最初の質問は楓花だ。
一体どんなことを質問するのか……
「澪ちゃんと拓也くんの関係を教えてください!」
「幼馴染ですが、何か?」
真顔で即答する澪を見て、つまらなさそうな表情を浮かべる楓花。
一体何を想像していたんだ、こいつは。
「逆に樹と楓花の関係は何なんだよ」
「俺たちの関係もそんなもんだ。小さい頃からの付き合いでな」
へぇ〜、とまたしても澪が不気味な笑みを浮かべた。
「じゃあ、2人はもう付き合ってるの?」
「「…………は!?」」
何度合ったかわからない程、息が合っているこの2人。
本当に夫婦漫才はもうやめてほしい。
さすがに、付き合っているかどうかは、聞いてはいけなさそうな気がするが……実は俺も結構気になっていたんだよな。
この2人は幼馴染だとしても、俺たちと比べたら距離近すぎるし、めっちゃ仲良いし、息ぴったりだし。
……もしかして、幼馴染って普通はこうなのか!?
確かに俺たちは10年も一緒にいなかったから、気安く近づくことができない。
お互い心を許してる? って聞かれたとしても、頷くことは出来ないかもしれない。
でもこの2人は、俺たちが一緒にいなかった10年間、ずっと一緒に過ごしていた。
その時間があったからこそ、お互い心を許して、今もずっと仲良く一緒にいるのだ。
「ないないないない! どうしてこんな奴と付き合わなきゃいけないわけ!?」
「まったくその通りだ! そもそも、こんなブスと付き合うわけないだろ!」
「誰がブスですって!?」
「お前しかいねーだろ! ばーか!」
本当にこいつら仲良すぎだろ。
見てて面白いし、これは弄りたいという澪の気持ちも十分に分かる。
「はぁ……もう最悪。どうしてこんな奴が幼馴染なんだろ」
樹に聞こえないように小声で言った楓花の言葉は、どうやら澪には聞こえていたようで、澪は立ち上がって楓花に近づいていった。
そのまま楓花の耳元に口を近づけ、俺や樹には聞こえないような小声で、何かを伝えている。
内容を伝え終わったらしく、澪が後退すると楓花の顔がどんどん赤くなっていった。
「澪、お前何言ったんだ?」
「たっくんは知らなくていいことだから、内緒」
そんなこと言われたら、もっと気になってしまうじゃないか。
少し可哀想だが、本人に聞く以外方法はない。
「なぁ、楓花」
「うぅ…………」
呼びかけても返答はなく、赤面した状態で何かを堪えているように見えた。
「楓花……さん?」
「…………そ、そんなわけないでしょ! 大体なんで私が!」
「ふふ、反応遅すぎでしょ」
楓花が急に叫び出し、それに対して笑う澪。
本当に何言ったんだよ……すごく気になる。
そんなこんなで、その後も親睦会は昼休みが終わるギリギリまで続き、出た質問はほとんどが幼馴染である2人の関係だった。
最後の方なんて、小さい頃の思い出話をしていたくらいだ。
「はぁ〜、この後の授業だるいわ〜」
「おい楓花、だらしないぞ」
屋上から教室に戻った俺たちは、自席に座って軽く談笑していた。
席が近いと便利だな、色々と。
「いやいや、普通でしょ。誰だって机に突っ伏すよ」
「生憎、俺は一度もしたことがない」
「それは樹が真面目すぎるからでしょ!」
さっきの親睦会でも分かったことだが、樹はかなり真面目な性格をしている。
中学生の頃は生徒会長もしていたらしいし、このクラスでも学級委員長に立候補するらしい。
チャラそうな外見だったから、すごく意外だ。
「真面目で何が悪い」
「ぐぬぬ…………あ、そうだ! 2人とも放課後空いてる?」
樹と話していたはずの楓花は、言い返せなくなったのか、樹を無視して急に後ろに振り向き、俺と澪に話を振ってきた。
「おい! 俺の話を聞け!」
「俺は空いてるぞ」
「……じゃあ、私も空いてる」
「お前らも無視か!?」
俺は特に用事もなかったため即答したが、澪は俺が言ってすぐには返答しなかった。
あの間はなんだ?
それに、‴じゃあ私も‴って……
「よかった! 帰る前に皆でどっかに寄っていこ」
「ああ」
「うん……」
「……」
まさか───────